2027.06.24
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部分メッキとは?マスキングの方法・種類と失敗を防ぐポイントを解説
素材の表面に金属の皮膜を付着させるメッキは、さまざまな製品の表面処理として活用されています。
メッキの目的はさまざまなものがありますが、メッキは原則は素材をメッキ液に浸し、表面全体を皮膜で覆います。
しかし、中には全体でなく一部分のみのメッキに留める必要がある製品や部品もあります。
そのような場合、メッキを行わない不メッキ部もある部分メッキを行うことがあります。
本記事では部分メッキの中でも最も一般的なマスキング法を中心に、部分メッキについて解説します。
マスキングのやり方にもいくつか種類があり、それぞれの特徴や、実際にマスキングを行う際のポイントもご紹介します。
部分メッキの活用をご検討中の方はご一読ください。
1. なぜ部分メッキが必要なのか?
1.1. 部分メッキとは
1.2. 部分メッキの目的
1.3. 部分メッキの用途
2. 代表的な部分メッキの方法
2.1. マスキング法
2.2. 部分浸漬法
2.3. 筆メッキ
3. マスキング法の種類と特徴
3.1. マスキングテープ
3.2. 液体マスキング
3.3. マスキング治具
3.4. フォトレジスト
4. マスキング法の標準的な工程
5. マスキングを行う際のポイント
5.1. 密着性の確保
5.2. 過酷なメッキ環境への適合
5.3. 残渣対策
5.4. 製品設計の工夫
6. マスキングが活躍するその他の事例
6.1. 異種金属材の事例(アルミとSUS)
6.2. 通電部の接点としてマスキングを利用する事例
7. まとめ

メッキとは、素材の表面に金属の皮膜を付着させ素材を腐食などから保護したり、表面に新たな性質を付与する技術です。
メッキにもさまざまな方法がありますが、多くの場合はメッキ液に素材を浸して行うため、表面全体に皮膜が付着する全体メッキが基本となります。
しかし、素材全体に皮膜が必要ない場合や、かえって皮膜がない方が良い部分がある場合もあります。
そのような場合、素材の中の一部分のみをメッキする部分メッキを行うこともあります。
まずは部分メッキの目的や用途、一部分だけのメッキにする手法などをご紹介します。

部分メッキの目的はいくつかあります。
まずは同じ素材で性質を場所ごとに使い分けたい場合です。
例えば、電子部品などは接点部分は電気を通したいけど、他の部分は絶縁しておきたいというような要望がある場合、接点部分にのみ金メッキなどの電気を通しやすい金属のメッキを行います。
他にも、一部分だけ硬くしたい、一部分だけはんだ付けしたいなどの要求が出ることがあります。
金、銀、パラジウムのような貴金属のメッキの場合、原材料費が高いため、コスト削減の目的で必要な箇所のみ部分メッキする場合もあります。
ただし、部分メッキの工程は全体メッキより作業費がかかるため、この目的で全てのメッキがコスト削減に繋がるわけではなく、一般にこの目的は貴金属メッキのみの適用例となります。
メッキをすると皮膜分だけ板厚が上がり、そのことで寸法がコントロールできない場合は、寸法精度が求められない箇所のみのメッキにすることもあります。
製品を2トーンカラーの見た目にしたい場合など、デザイン上、部分メッキでコントラストを付けることもあります。
1.3. 部分メッキの用途
(コネクタの画像)
具体的に部分メッキの例を挙げると、前述のような電子部品のコネクタや接点の部分金メッキの事例は多いです。
同じく電子部品は基板実装部を部分スズメッキにしてはんだ付け性を付与したりもします。
自動車や機械に使われるシャフトやシリンダーは、摩耗が激しくなる摺動部にのみ耐摩耗性を向上するための硬質クロムメッキを行います。
医療機器におけるカテーテル用ワイヤーなどでは、人体に触れる箇所や電気信号を拾う部分のみに生体適合性の高い貴金属メッキを行います。
腕時計やアクセサリーなど、ベースはステンレスやチタンのものもあり、装飾用の部分メッキで見た目を向上させているパターンもあります。

素材をメッキ液に浸して行うメッキにおいて、部分メッキだとどのようにして一部分のみに皮膜を付着させるのかが問題ですが、いくつか方法があります。
最も一般的な方法はマスキング法です。
そもそもメッキは、メッキ液に接した素材の表面に、通電などに伴い化学的に金属皮膜が付着することで行われます。
つまり、メッキ液に接している箇所は皮膜が付着するということなので、メッキしない場所はメッキ液に直接素材が付かないよう、液内で隠しておく方法です。
隠されている部分はメッキされず、このような部分を不メッキ部といいます。
逆に、それ以外の部分は部分メッキされていることになります。
液内で素材を隠す方法はいくつかあるので、後ほど詳しくご紹介します。
このマスキング法は、部分メッキで最もよく用いられる方法です。

コネクタの端子のみ、などのあるレベルまでのメッキで終わらせる物を、さらに大量に作るような場合、部分浸漬法も有効です。
治具に正確に素材を設置しておき、液面のレベルも正確に測っておきます。
コネクタの長さ分のみを一度に大量にメッキ液に一定時間浸すようにすれば、液に浸っている部分(コネクタ)のみがメッキされます。
大量生産の自動化システムに組み込みやすく、コスト削減にも繋がりますが、形状は限定されてしまい、応用はききにくいです。

筆メッキは、メッキ液を含ませた筆状の電極を素材に直接当て、なぞるようにメッキしてゆく方法です。
補修や極小部分へのメッキとして行うことが多いです。
筆でなぞるスピード、回数などでメッキ厚さも変わるため、職人的な技術が必要となります。

部分メッキの方法として最も多用されるマスキング法は、マスキングの方法によってさらにいくつか分類されます。
その中でもポピュラーなのはマスキングテープによる方法です。
シンプルにいうとメッキをしない部分をテープで覆い、その部分の素材をメッキ液から保護する方法です。
使用するテープはなんでも良いというわけではなく、メッキ液の強酸や強アルカリ、または高温にも耐えられる特殊なものでなければなりません。
平面や円筒などシンプルな形状であれば素早く作業でき、特別な設備も必要ありません。
手作業に依存するため、大量生産には適していないです。
また、テープ端部から液が素材側に浸入してしまうと、意図せずメッキされてしまう部分ができてしまうため、端部はローラーなどで完全に密着させる必要があります。

マスキングテープを貼るのが困難な複雑な形状や極小の部品の場合、マスキング剤を塗料のように不メッキ部に塗り、乾燥硬化させて皮膜を作ります。
その状態でメッキ液に浸し、その後に塗料を剥がせばその部分はメッキされていないという具合です。
複雑な形状、凹凸にもマスキング剤が入るため、マスキングの密着性が高く、メッキ液が浸入することはありません。
熟練技術を要し、液体の乾燥硬化には時間もかかります。
さらにマスキングを剥がす作業にも手間を要することがあります。

同形状の物を大量に部分メッキする場合、耐熱性と耐薬品性が高いシリコンゴムやフッ素樹脂で作った治具で物理的にカバーや栓をする方法もあります。
隙間などができないよう嵌め込めるような治具にすることがポイントで、その設計製作自体には時間もコストもかかってしまいます。
しかし、一度作れば同じ形状のものには何度も繰り返し使用することができ、作業スピードも劇的に改善されるうえ、ゴミもほとんど出ません。

フォトレジストによるマスキングは、プリント基板や半導体製品に用いられる特殊な方法です。
写真露光の技術を応用したもので、感光性のレジストフィルムを素材に貼り付けておき、紫外線を当ててメッキしたい部分のみを現像・除去する方法です。
極めて微細なマスキングパターンを作れますが、コストは圧倒的に高いです。

マスキング法による部分メッキの標準的な工程は以下の通りです。
一次前処理(脱脂・洗浄)→マスキング→二次前処理(酸洗い・活性化)→メッキ→マスキング剥離→後処理(超音波洗浄・残渣除去)→乾燥・検査
このように部分メッキの工程は、一般的な全体メッキより工程数が多くなります。
特にマスキング作業そのものは手作業が多く、手間と時間がかかることも多いです。
したがって、部分メッキをしてメッキ材の量を減らしたからといってメッキ作業全体が低コストになるとは限りません。
むしろ、貴金属メッキ以外は部分メッキの方がコスト高になることの方が多いです。
各工程については、次のマスキングのポイントで触れていきます。

マスキングを行う際、失敗してしまうと必要ない箇所までメッキ皮膜が付いてしまいます。
そのような失敗をしないために、上記工程の中にいくつかポイントがあります。
一次前処理の脱脂・洗浄は、メッキ自体の密着性を高める目的もありますが、マスキングテープなどが隙間なく付き、油分などで浮き上がってこないためにも重要です。
部分メッキの際はこの工程はなおさら重要工程と言えます。
また、前述の通り、マスキング境界部は特に圧着してメッキ液の浸入を防ぐようにしなければなりません。

マスキングをした後、メッキ皮膜をしたい箇所には表面の酸化膜を取り除いてメッキ密着性を上げるために二次前処理として酸洗いを行います。
これは素材全体を酸性薬品に漬け込む作業なので、マスキングの材質は酸性で溶けてしまわないようなものを使わなければなりません。
また、直後のメッキ工程自体も薬品を用い、通電が伴ったり、高温であったりと過酷な環境が続きます。
マスキングはこのような環境を見越して素材選びなどから行う必要があります。

マスキングを剥離した後の超音波洗浄と残渣除去は、部分メッキ特有の工程です。
マスキングテープの糊や液体レジストの微小な残渣が残ってしまうと、製品不良を起こしてしまうので、これを専用の剥離液や超音波洗浄機で徹底的に洗い落とします。
部分メッキの品質トラブルの多くはこの工程の問題で起こり、部分メッキの中では最も重要な工程と言っても過言ではありません。
メッキ後に長時間放置しておくと、テープの糊と素材の密着が増してしまい、結果剥離しにくく残渣も出やすくなるため、剥離のタイミングなども大切です。
なお、マスキング治具を用いる方法だと、この工程のトラブルは起きません。

部分メッキを行う前提で製品設計をする場合、そもそも製品形状を決定する段階でマスキングする個所をできるだけシンプルな形状にしておくことも効果的です。
複雑な曲面やコーナー部分がメッキ境界線だと、方法も限られコストも上がります。
理想は平面のようなテープを貼りやすい形状であったり、治具を嵌め込みやすいような形状です。

ここからはマスキングという技術そのものの応用例です。
部分メッキの不メッキ部を隠しておく以外のマスキングの使用例のご紹介です。
例えば、アルミのロールにSUSのブッシュを焼き嵌めなどで一体化し、作られたような部品があったとします。
アルミ部分はアルマイト処理という化成防錆処理を行うのですが、アルマイト処理液はSUSを溶かしてしまう性質があります。
一方で、アルマイト処理後のロールを焼き嵌めしようとすると、熱によりアルマイト皮膜が割れてしまいます。
したがって、焼き嵌めで一体化した後、SUS分全体をマスキングしてアルマイト処理液に漬け込む対応を取ることがあります。

電気メッキにおいて、素材に通電治具が接触している箇所は厳密には、メッキ液に接していない点が存在するため、メッキ皮膜が乗らない箇所になってしまいます。
したがって、そもそもマスキングしてメッキする必要のない箇所の上から通電端子を通し、その通電が素材全体に伝われば、本来メッキしたい場所にメッキのない点があるという事態は防げます。

部分メッキ、特にマスキング法について解説しました。
以下はそのまとめです。
・素材の全体でなく一部分のみメッキを行う部分メッキは、同一素材上で性質を変えたいとき、貴金属メッキの原材料費削減、寸法精度の関連などの目的で用いられる。
・部分メッキには、マスキング法、部分浸漬法、筆メッキなどの方法があり、マスキング法が最も一般的である。
・マスキングの方法にはマスキングテープ、液体マスキング、マスキング治具、フォトレジストなどがある。
・マスキング法による部分メッキは全体メッキより工程数も工程時間も増え、貴金属メッキ以外は高コストになりやすい。
・マスキングを行う際、マスキングテープなどの密着性、マスキング材質のメッキ環境への適合、残渣対策などが重要なポイントである。
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メッキの目的はさまざまなものがありますが、メッキは原則は素材をメッキ液に浸し、表面全体を皮膜で覆います。
しかし、中には全体でなく一部分のみのメッキに留める必要がある製品や部品もあります。
そのような場合、メッキを行わない不メッキ部もある部分メッキを行うことがあります。
本記事では部分メッキの中でも最も一般的なマスキング法を中心に、部分メッキについて解説します。
マスキングのやり方にもいくつか種類があり、それぞれの特徴や、実際にマスキングを行う際のポイントもご紹介します。
部分メッキの活用をご検討中の方はご一読ください。
index
1. なぜ部分メッキが必要なのか?
1.1. 部分メッキとは
1.2. 部分メッキの目的
1.3. 部分メッキの用途
2. 代表的な部分メッキの方法
2.1. マスキング法
2.2. 部分浸漬法
2.3. 筆メッキ
3. マスキング法の種類と特徴
3.1. マスキングテープ
3.2. 液体マスキング
3.3. マスキング治具
3.4. フォトレジスト
4. マスキング法の標準的な工程
5. マスキングを行う際のポイント
5.1. 密着性の確保
5.2. 過酷なメッキ環境への適合
5.3. 残渣対策
5.4. 製品設計の工夫
6. マスキングが活躍するその他の事例
6.1. 異種金属材の事例(アルミとSUS)
6.2. 通電部の接点としてマスキングを利用する事例
7. まとめ
1. なぜ部分メッキが必要なのか?
1.1. 部分メッキとは

メッキとは、素材の表面に金属の皮膜を付着させ素材を腐食などから保護したり、表面に新たな性質を付与する技術です。
メッキにもさまざまな方法がありますが、多くの場合はメッキ液に素材を浸して行うため、表面全体に皮膜が付着する全体メッキが基本となります。
しかし、素材全体に皮膜が必要ない場合や、かえって皮膜がない方が良い部分がある場合もあります。
そのような場合、素材の中の一部分のみをメッキする部分メッキを行うこともあります。
まずは部分メッキの目的や用途、一部分だけのメッキにする手法などをご紹介します。
1.2. 部分メッキの目的

部分メッキの目的はいくつかあります。
まずは同じ素材で性質を場所ごとに使い分けたい場合です。
例えば、電子部品などは接点部分は電気を通したいけど、他の部分は絶縁しておきたいというような要望がある場合、接点部分にのみ金メッキなどの電気を通しやすい金属のメッキを行います。
他にも、一部分だけ硬くしたい、一部分だけはんだ付けしたいなどの要求が出ることがあります。
金、銀、パラジウムのような貴金属のメッキの場合、原材料費が高いため、コスト削減の目的で必要な箇所のみ部分メッキする場合もあります。
ただし、部分メッキの工程は全体メッキより作業費がかかるため、この目的で全てのメッキがコスト削減に繋がるわけではなく、一般にこの目的は貴金属メッキのみの適用例となります。
メッキをすると皮膜分だけ板厚が上がり、そのことで寸法がコントロールできない場合は、寸法精度が求められない箇所のみのメッキにすることもあります。
製品を2トーンカラーの見た目にしたい場合など、デザイン上、部分メッキでコントラストを付けることもあります。
1.3. 部分メッキの用途
(コネクタの画像)
具体的に部分メッキの例を挙げると、前述のような電子部品のコネクタや接点の部分金メッキの事例は多いです。
同じく電子部品は基板実装部を部分スズメッキにしてはんだ付け性を付与したりもします。
自動車や機械に使われるシャフトやシリンダーは、摩耗が激しくなる摺動部にのみ耐摩耗性を向上するための硬質クロムメッキを行います。
医療機器におけるカテーテル用ワイヤーなどでは、人体に触れる箇所や電気信号を拾う部分のみに生体適合性の高い貴金属メッキを行います。
腕時計やアクセサリーなど、ベースはステンレスやチタンのものもあり、装飾用の部分メッキで見た目を向上させているパターンもあります。
2. 代表的な部分メッキの方法
2.1. マスキング法

素材をメッキ液に浸して行うメッキにおいて、部分メッキだとどのようにして一部分のみに皮膜を付着させるのかが問題ですが、いくつか方法があります。
最も一般的な方法はマスキング法です。
そもそもメッキは、メッキ液に接した素材の表面に、通電などに伴い化学的に金属皮膜が付着することで行われます。
つまり、メッキ液に接している箇所は皮膜が付着するということなので、メッキしない場所はメッキ液に直接素材が付かないよう、液内で隠しておく方法です。
隠されている部分はメッキされず、このような部分を不メッキ部といいます。
逆に、それ以外の部分は部分メッキされていることになります。
液内で素材を隠す方法はいくつかあるので、後ほど詳しくご紹介します。
このマスキング法は、部分メッキで最もよく用いられる方法です。
2.2. 部分浸漬法

コネクタの端子のみ、などのあるレベルまでのメッキで終わらせる物を、さらに大量に作るような場合、部分浸漬法も有効です。
治具に正確に素材を設置しておき、液面のレベルも正確に測っておきます。
コネクタの長さ分のみを一度に大量にメッキ液に一定時間浸すようにすれば、液に浸っている部分(コネクタ)のみがメッキされます。
大量生産の自動化システムに組み込みやすく、コスト削減にも繋がりますが、形状は限定されてしまい、応用はききにくいです。
2.3. 筆メッキ

筆メッキは、メッキ液を含ませた筆状の電極を素材に直接当て、なぞるようにメッキしてゆく方法です。
補修や極小部分へのメッキとして行うことが多いです。
筆でなぞるスピード、回数などでメッキ厚さも変わるため、職人的な技術が必要となります。
3. マスキング法の種類と特徴
3.1. マスキングテープ

部分メッキの方法として最も多用されるマスキング法は、マスキングの方法によってさらにいくつか分類されます。
その中でもポピュラーなのはマスキングテープによる方法です。
シンプルにいうとメッキをしない部分をテープで覆い、その部分の素材をメッキ液から保護する方法です。
使用するテープはなんでも良いというわけではなく、メッキ液の強酸や強アルカリ、または高温にも耐えられる特殊なものでなければなりません。
平面や円筒などシンプルな形状であれば素早く作業でき、特別な設備も必要ありません。
手作業に依存するため、大量生産には適していないです。
また、テープ端部から液が素材側に浸入してしまうと、意図せずメッキされてしまう部分ができてしまうため、端部はローラーなどで完全に密着させる必要があります。
3.2. 液体マスキング

マスキングテープを貼るのが困難な複雑な形状や極小の部品の場合、マスキング剤を塗料のように不メッキ部に塗り、乾燥硬化させて皮膜を作ります。
その状態でメッキ液に浸し、その後に塗料を剥がせばその部分はメッキされていないという具合です。
複雑な形状、凹凸にもマスキング剤が入るため、マスキングの密着性が高く、メッキ液が浸入することはありません。
熟練技術を要し、液体の乾燥硬化には時間もかかります。
さらにマスキングを剥がす作業にも手間を要することがあります。
3.3. マスキング治具

同形状の物を大量に部分メッキする場合、耐熱性と耐薬品性が高いシリコンゴムやフッ素樹脂で作った治具で物理的にカバーや栓をする方法もあります。
隙間などができないよう嵌め込めるような治具にすることがポイントで、その設計製作自体には時間もコストもかかってしまいます。
しかし、一度作れば同じ形状のものには何度も繰り返し使用することができ、作業スピードも劇的に改善されるうえ、ゴミもほとんど出ません。
3.4. フォトレジスト

フォトレジストによるマスキングは、プリント基板や半導体製品に用いられる特殊な方法です。
写真露光の技術を応用したもので、感光性のレジストフィルムを素材に貼り付けておき、紫外線を当ててメッキしたい部分のみを現像・除去する方法です。
極めて微細なマスキングパターンを作れますが、コストは圧倒的に高いです。
4. マスキング法の標準的な工程

マスキング法による部分メッキの標準的な工程は以下の通りです。
一次前処理(脱脂・洗浄)→マスキング→二次前処理(酸洗い・活性化)→メッキ→マスキング剥離→後処理(超音波洗浄・残渣除去)→乾燥・検査
このように部分メッキの工程は、一般的な全体メッキより工程数が多くなります。
特にマスキング作業そのものは手作業が多く、手間と時間がかかることも多いです。
したがって、部分メッキをしてメッキ材の量を減らしたからといってメッキ作業全体が低コストになるとは限りません。
むしろ、貴金属メッキ以外は部分メッキの方がコスト高になることの方が多いです。
各工程については、次のマスキングのポイントで触れていきます。
5. マスキングを行う際のポイント
5.1. 密着性の確保

マスキングを行う際、失敗してしまうと必要ない箇所までメッキ皮膜が付いてしまいます。
そのような失敗をしないために、上記工程の中にいくつかポイントがあります。
一次前処理の脱脂・洗浄は、メッキ自体の密着性を高める目的もありますが、マスキングテープなどが隙間なく付き、油分などで浮き上がってこないためにも重要です。
部分メッキの際はこの工程はなおさら重要工程と言えます。
また、前述の通り、マスキング境界部は特に圧着してメッキ液の浸入を防ぐようにしなければなりません。
5.2. 過酷なメッキ環境への適合

マスキングをした後、メッキ皮膜をしたい箇所には表面の酸化膜を取り除いてメッキ密着性を上げるために二次前処理として酸洗いを行います。
これは素材全体を酸性薬品に漬け込む作業なので、マスキングの材質は酸性で溶けてしまわないようなものを使わなければなりません。
また、直後のメッキ工程自体も薬品を用い、通電が伴ったり、高温であったりと過酷な環境が続きます。
マスキングはこのような環境を見越して素材選びなどから行う必要があります。
5.3. 残渣対策

マスキングを剥離した後の超音波洗浄と残渣除去は、部分メッキ特有の工程です。
マスキングテープの糊や液体レジストの微小な残渣が残ってしまうと、製品不良を起こしてしまうので、これを専用の剥離液や超音波洗浄機で徹底的に洗い落とします。
部分メッキの品質トラブルの多くはこの工程の問題で起こり、部分メッキの中では最も重要な工程と言っても過言ではありません。
メッキ後に長時間放置しておくと、テープの糊と素材の密着が増してしまい、結果剥離しにくく残渣も出やすくなるため、剥離のタイミングなども大切です。
なお、マスキング治具を用いる方法だと、この工程のトラブルは起きません。
5.4. 製品設計の工夫

部分メッキを行う前提で製品設計をする場合、そもそも製品形状を決定する段階でマスキングする個所をできるだけシンプルな形状にしておくことも効果的です。
複雑な曲面やコーナー部分がメッキ境界線だと、方法も限られコストも上がります。
理想は平面のようなテープを貼りやすい形状であったり、治具を嵌め込みやすいような形状です。
6. マスキングが活躍するその他の事例
6.1. 異種金属材の事例(アルミとSUS)

ここからはマスキングという技術そのものの応用例です。
部分メッキの不メッキ部を隠しておく以外のマスキングの使用例のご紹介です。
例えば、アルミのロールにSUSのブッシュを焼き嵌めなどで一体化し、作られたような部品があったとします。
アルミ部分はアルマイト処理という化成防錆処理を行うのですが、アルマイト処理液はSUSを溶かしてしまう性質があります。
一方で、アルマイト処理後のロールを焼き嵌めしようとすると、熱によりアルマイト皮膜が割れてしまいます。
したがって、焼き嵌めで一体化した後、SUS分全体をマスキングしてアルマイト処理液に漬け込む対応を取ることがあります。
6.2. 通電部の接点としてマスキングを利用する事例

電気メッキにおいて、素材に通電治具が接触している箇所は厳密には、メッキ液に接していない点が存在するため、メッキ皮膜が乗らない箇所になってしまいます。
したがって、そもそもマスキングしてメッキする必要のない箇所の上から通電端子を通し、その通電が素材全体に伝われば、本来メッキしたい場所にメッキのない点があるという事態は防げます。
7. まとめ

部分メッキ、特にマスキング法について解説しました。
以下はそのまとめです。
・素材の全体でなく一部分のみメッキを行う部分メッキは、同一素材上で性質を変えたいとき、貴金属メッキの原材料費削減、寸法精度の関連などの目的で用いられる。
・部分メッキには、マスキング法、部分浸漬法、筆メッキなどの方法があり、マスキング法が最も一般的である。
・マスキングの方法にはマスキングテープ、液体マスキング、マスキング治具、フォトレジストなどがある。
・マスキング法による部分メッキは全体メッキより工程数も工程時間も増え、貴金属メッキ以外は高コストになりやすい。
・マスキングを行う際、マスキングテープなどの密着性、マスキング材質のメッキ環境への適合、残渣対策などが重要なポイントである。





