2026.06.16
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アルマイトとメッキの違いとは?アルミニウム表面処理を徹底比較【耐食性・硬度・導電性】
アルミニウムという素材は、非常に軽い一方で強度も高く、加工性も良いため、現代社会のさまざまなシーンで活用されています。
一方で、表面が柔らかいためにそのまま使用したらすぐに傷が付いてしまったり、薬品環境や塩害環境で腐食してしまうなど、いくつかの弱点もあります。
そこで多くの場合、アルミニウム素材の物を製品化するときは表面処理を行います。
アルミニウム素材に行われる表面処理は、主にアルマイトとメッキの2種類です。
本記事では、アルマイトとメッキというアルミニウムへの二大表面処理を徹底比較します。
それぞれの原理や性質の紹介、主要分野での徹底比較の他、おすすめの活用シーンや実際の製品使用例もご紹介します。
アルミニウム製品の製造をお考えの方、特に表面処理で迷われている方は是非参考になさってください。
1. アルミニウムへの表面処理
1.1. アルミニウムの性質と表面処理
1.2. アルマイトとは(原理と性質)
1.3. アルミニウムへの主なメッキの種類と性質
2. 徹底比較!アルマイトVSメッキ
2.1. 耐食性
2.2. 硬度
2.3. 電気特性
2.4. その他(見た目やコスト)
3. 迷ったときに活用!おすすめシーン
3.1. アルマイトが絶対的におすすめのシーン
3.2. メッキが絶対的におすすめのシーン
3.3. 迷ったときの選定チェック
4. 使用例の紹介
4.1. スマートフォン・ノートPCなどのアルミケース(アルマイトの例)
4.2. 電気自動車などのバッテリー周辺部品(メッキの例)
4.3. 半導体・精密機械の複雑な可動ブロック(メッキの例)
5. まとめ

アルミニウムという素材は工業的にとても優れた性質を持っており、私たちの日常で使う物も含め、さまざまな製品に広く活用されています。
アルミニウムの主なメリットとして、圧倒的な軽さがあります。
密度は鉄鋼材の3分の1程度しかなく、その割に強度は高いため、製品の大幅な軽量化を実現できます。
加工性も高いため、削ったり曲げたりして作る製品も比較的作りやすいです。
熱伝導性や導電性も高いという性質もあり、そのような用途で使用されることも多いです。
このようにアルミニウムの長所を活かせるシーンはとても多いのですが、一方で短所もあります。
一つは素地が柔らかすぎて、他の部品と接したときに簡単に傷が付いてしまうことです。
また、酸やアルカリの環境に弱く、他の金属との接触ではガルバニック腐食を起こしてしまいます。
これらの短所を克服し、アルミニウムの性質を存分に活かしたものにするため、アルミニウム製品には表面処理を行うことが多いです。
アルミニウムの表面処理には、アルマイトとメッキが一般的で、それぞれに得意分野があります。。
本記事では、アルマイトとメッキの2つの方法を徹底比較していきます。

アルマイトはアルミニウム素材にのみ行える表面処理です。
アルミニウム素材の表面を電気化学的に変化させ、酸化膜(アルミナ)層を生成させる方法です。
この酸化被膜は硬くて傷が付きにくく、錆びにくい耐食性も持っています。
また、表面のアルミニウム素材そのものを利用した化学反応を利用するため、皮膜は内側と外側に成長し、素材の層と皮膜の層の密着性(一体の度合い)が非常に高いです。
つまり、とても剥がれにくく、傷付きや腐食もしない層が出来上がるのです。
ちなみにこのアルマイトの層はナノレベルの微細な孔が無数に空いていて、そこに染料を染み込ませることでカラーバリエーションのある皮膜にすることもできます。
アルマイトの層は素材から一転して電気を通さず、アルマイトをしたアルミニウム製品は絶縁体となります。
表面が硬くなる反面、アルマイト後に強引に曲げようとしたりすると、変形せずにクラックが発生してしまうので、加工後の表面処理をお勧めします。

メッキは素材の表面に他の金属皮膜を付着させる表面処理です。
メッキという方法自体は、アルミニウム素材以外の素材でも広く使うことができます。
製品表面の性質は、付着させた金属皮膜の性質になります。
ただし、いわば素材に他物質を乗せて層を作るような方法なので、密着性はアルマイトに比べると低くなります。
また、表面の色は基本的に皮膜金属の色で、カラーバリエーションはほとんどありません。
アルミニウム素材に行うメッキとしてよく挙げられるのは、無電解ニッケルメッキ、スズメッキ、金メッキ、硬質クロムメッキなどです。
無電解ニッケルメッキは、硬度をとても高くすることができ、摺動部といわれる部品同士が動いて素材だと削れてしまうような箇所にも活用されます。
また、この方法は複雑な形状への皮膜の均一性が高く、寸法精度などが厳しい精密部品への適用もしやすいです。
スズメッキは、はんだ付け性が高く、アルミニウム素材にはできないはんだ付けを可能にするため、電子回路などで活用ができます。
金メッキは、コネクタ端子などさらに高い導電性などが必要なときに利用します。
硬質クロムメッキは、無電解ニッケルメッキより硬度が高く、高い圧力で摺動する部品などでこちらを選択することもあります。

ここからはアルマイトとメッキというアルミ素材への2つの表面処理を比較してみましょう。
まずは耐食性です。
耐食性を重視したい場合、メッキは無電解ニッケルメッキを選択することが多いので、主に無電解ニッケルメッキで比較します。
アルマイトの表面皮膜は、空気中で錆びにくい性質も十分持っていて、一般的な屋外仕様の製品でも問題なく利用できます。
また、異種金属を接触させた際のガルバニック腐食も完全に防ぐことができます。
ただし、アルマイトの皮膜では酸やアルカリ環境に弱く、皮膜そのものが溶解してしまいます。
また、アルマイトの皮膜は熱環境でクラックが発生して壊れてしまうこともあります。
無電解ニッケルメッキの場合、普通の屋外環境や塩害環境でも十分な耐食性を持つ上に、酸やアルカリの環境にも強いです。
例えば、製品がコンクリートに触れるシーンなどは、アルカリ環境になるので無電解ニッケルメッキがお勧めです。
熱環境でも無電解ニッケルメッキの方が皮膜が安定します。
腐食を考える場合、通常環境ならはアルマイトで良いけど、周辺環境に応じてメッキの選択も視野に入れるような位置付けになります。

アルミニウムの硬度は、ビッカース硬度が純アルミニウムで20〜45Hv、アルミニウム合金で150Hv程度で、これはとても低い値です。
主に防食を目的とした普通アルマイトでも、これを200〜300Hvまでは上げることができ、日用品程度ならこれでも良い効果をもたらしてくれます。
アルマイトの層をよりゆっくり緻密に生成する硬質アルマイトは400〜600Hvとなり、摺動部での適用も可能となります。
無電解ニッケルメッキは、基本的にアルマイトより硬度が高く、メッキしたままの状態でも500Hv程度の硬度があります。
この状態から熱処理を行うと、800〜1000Hvと工具鋼並みの硬度になります。
摺動部品で、滑らかな動きも実現させたい場合は、硬質クロムメッキという選択肢もあります。
硬度も比較的広い範囲でアルマイトが適用可能ですが、特別な硬さや接触状態を考慮する場合はメッキということになります。
ただし、皮膜自体の密着性はアルマイトの方が強いので、皮膜自体が仮に削れても、剥がれなければ良いという場合はアルマイトに分があります。

電気特性はアルマイトとメッキで目的が180°変わります。
アルマイトの皮膜は完全に電気を通さない絶縁体です。
これに対して、金メッキや銀メッキをすることにより、アルミニウム素材を極めて通電性の高いものに変えることもできます。
この部分は製品の用途が電気を通すべきものか遮断すべきものか、目的に応じて使い分けることが大切です。
なお、無電解ニッケルメッキでもある程度の通電ができます。
また、前述のとおり、はんだ付けが必要な場合はスズメッキを選択すると良いです。

アルマイトの外観は、そのままだと金属光沢がある程度の見た目ですが、染料を利用したカラーバリエーションが豊富です。
色付きの製品を作りたい場合は、アルマイト一択となります。
なお、カラーバリエーションが豊富なのは普通アルマイトで、硬質アルマイトは濃色のみの選択肢に限られてきます。
メッキは基本的にその皮膜で用いる金属の色のみで、多少の光沢の度合いを選べる程度です。
コストを比較した場合、アルマイトが圧倒的に有利です。
特に普通アルマイトは、大量一括処理が可能なラインが組み込まれている場合もあり、群を抜いてリーズナブルなコストになります。
メッキの場合、前処理などの手間も増えるため、いずれの種類もアルマイトより高額です。
特に金メッキや銀メッキなど、皮膜金属の高価なものは高額になる傾向です。

ここまでご紹介したような性質を踏まえると、自ずとアルマイトとメッキの使い分け方も考えてゆくことができます。
アルマイトが絶対的に優位となるシーンはいくつかあります。
まずはその製品や部品が電気を通したくないときで、これは絶縁皮膜を生成するアルマイトの選択がお勧めです。
デザイン性特にカラーバリエーションを豊富に揃えたいときもアルマイトです。
硬度や耐摩耗性はアルマイトもメッキも強いものがありますが、皮膜自体の剥離を絶対に避けたいのであれば、(硬質)アルマイトの方が有利です。
また、三価クロムなど一部メッキ皮膜に用いる金属は環境規制の対象になっている物もある一方、アルマイトは環境負荷はほとんどありません。

メッキが優位となるシーンは、何といっても導電性です。
表面処理したい製品や部品に電気を通す必要がある場合、導電性の機能を付与するメッキで対応するしかありません。
その結果、軽くて丈夫な導電体という非常に使い道の多い素材を作ることができます。
また、はんだ付け性を付与したいときはスズメッキが有効です。
表面の硬度そのものを鉄以上に硬いものにしたいような場合は、無電解ニッケルメッキ+熱処理や硬質クロムメッキが必要です。
使用環境が酸やアルカリ環境の場合、アルマイトでは耐久性は保てず、無電解ニッケルメッキなどが適しています。
なお、無電解ニッケルメッキの方が皮膜の均一性も高く、複雑形状や精密部品にも適しています。

アルマイトとメッキのどちらの方法を選択をしたらよいか迷うときは、3つの点に主眼を置きましょう。
① 電気を通すか通さないか。
これは「通す」ならメッキ(無電解ニッケルメッキなど)、「通さない」ならアルマイトで明確です。
② 物理的接触が摩耗か荷重か。
接触して激しく動く部材の場合、摩耗は大きい一方で硬度自体はさほど要求されない可能性があり、その場合は摩耗には強くて剥がれにくい硬質アルマイトがベストです。
強い力で叩かれたり、荷重やインパクトが大きい箇所は、とにかく硬度そのものを確保するために無電解ニッケルメッキ+熱処理か硬質クロムメッキがお勧めになります。
③ 見た目やコストと用途のバランス。
色のバリエーションにこだわりたいとき、安く仕上げたいときなどを含めて、普通アルマイトでも十分に事足りるシーンは多いです。
ただし、使用環境で酸やアルカリが影響する場合は、カラーバリエーションやコストをある程度諦めて、無電解ニッケルメッキを選びましょう。

いくつか実際のアルマイトやメッキの採用事例をご紹介します。
スマートフォンやノートPCのアルミケースは、毎日のように手に持って使用することから、軽くて強いものである必要があります。
一方で、日常生活程度の負荷で傷が付いたり、手の汗などによる腐食が心配されます。
このような使用環境であれば、耐食性や硬度は普通アルマイトで十分です。
ケースなので、絶縁の性質がむしろ望ましい状況です。
また、普通アルマイトなら、このような製品によくあるカラーバリエーションも豊富に取り揃えられます。

電気自動車に使用される部品も軽量であることが求められ、アルミニウムは重宝されます。
バッテリー周辺部は大きな導電性が必要となり、表面処理としてはメッキを選択することになります。
このようなシーンでは、下地に無電解ニッケルメッキを行い耐食性と素材との密着性を確保した上で、表面に金メッキなどをさらに重ねることもあります。
はんだ付け性が必要な場合は、スズメッキも有効です。

半導体製造などで用いる精密な可動ブロックには、軽くて俊敏に動けることから、アルミニウムが使われます。
ただし、十分な耐摩耗性があること、精密な位置決めができることなども重要になり、表面処理が必要になります。
アルマイトなどの方法だと、精密な部品の表面処理の場合に通電条件によって皮膜の均一性が保たれにくく、均一性の高い無電解ニッケルメッキが最適法となります。
熱処理を行うことで、非常に強固で精密なブロックにすることができます。

アルミニウムへの表面処理として、アルマイトとメッキを比較しました。
以下はそのまとめです。
・アルミニウムは軽量高強度で加工性も高く、多くの製品に素材として用いられるが、いくつかの弱点を補うためにアルマイトやメッキといった表面処理が行われる。
・アルマイトはアルミニウムのみに行える表面処理で、アルミニウム素材より高い耐食性や硬度を持ち、電気は通さない。
・メッキは皮膜の金属によって性質が異なるが、アルミニウム素材に対してアルマイトより高い硬度を持たせたり、導電性の高い部材にすることもできる。
・酸やアルカリの環境であれば、メッキを選択した方が良い。
・コスト面ではアルマイトが圧倒的に優位で、さらにアルマイトだとカラーバリエーションも選択できる。
・使用シーンやデザイン性、コストなどを考慮し、適切な表面処理を選択することが大切である。
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一方で、表面が柔らかいためにそのまま使用したらすぐに傷が付いてしまったり、薬品環境や塩害環境で腐食してしまうなど、いくつかの弱点もあります。
そこで多くの場合、アルミニウム素材の物を製品化するときは表面処理を行います。
アルミニウム素材に行われる表面処理は、主にアルマイトとメッキの2種類です。
本記事では、アルマイトとメッキというアルミニウムへの二大表面処理を徹底比較します。
それぞれの原理や性質の紹介、主要分野での徹底比較の他、おすすめの活用シーンや実際の製品使用例もご紹介します。
アルミニウム製品の製造をお考えの方、特に表面処理で迷われている方は是非参考になさってください。
INDEX
1. アルミニウムへの表面処理
1.1. アルミニウムの性質と表面処理
1.2. アルマイトとは(原理と性質)
1.3. アルミニウムへの主なメッキの種類と性質
2. 徹底比較!アルマイトVSメッキ
2.1. 耐食性
2.2. 硬度
2.3. 電気特性
2.4. その他(見た目やコスト)
3. 迷ったときに活用!おすすめシーン
3.1. アルマイトが絶対的におすすめのシーン
3.2. メッキが絶対的におすすめのシーン
3.3. 迷ったときの選定チェック
4. 使用例の紹介
4.1. スマートフォン・ノートPCなどのアルミケース(アルマイトの例)
4.2. 電気自動車などのバッテリー周辺部品(メッキの例)
4.3. 半導体・精密機械の複雑な可動ブロック(メッキの例)
5. まとめ
1. アルミニウムへの表面処理
1.1. アルミニウムの性質と表面処理

アルミニウムという素材は工業的にとても優れた性質を持っており、私たちの日常で使う物も含め、さまざまな製品に広く活用されています。
アルミニウムの主なメリットとして、圧倒的な軽さがあります。
密度は鉄鋼材の3分の1程度しかなく、その割に強度は高いため、製品の大幅な軽量化を実現できます。
加工性も高いため、削ったり曲げたりして作る製品も比較的作りやすいです。
熱伝導性や導電性も高いという性質もあり、そのような用途で使用されることも多いです。
このようにアルミニウムの長所を活かせるシーンはとても多いのですが、一方で短所もあります。
一つは素地が柔らかすぎて、他の部品と接したときに簡単に傷が付いてしまうことです。
また、酸やアルカリの環境に弱く、他の金属との接触ではガルバニック腐食を起こしてしまいます。
これらの短所を克服し、アルミニウムの性質を存分に活かしたものにするため、アルミニウム製品には表面処理を行うことが多いです。
アルミニウムの表面処理には、アルマイトとメッキが一般的で、それぞれに得意分野があります。。
本記事では、アルマイトとメッキの2つの方法を徹底比較していきます。
1.2. アルマイトとは(原理と性質)

アルマイトはアルミニウム素材にのみ行える表面処理です。
アルミニウム素材の表面を電気化学的に変化させ、酸化膜(アルミナ)層を生成させる方法です。
この酸化被膜は硬くて傷が付きにくく、錆びにくい耐食性も持っています。
また、表面のアルミニウム素材そのものを利用した化学反応を利用するため、皮膜は内側と外側に成長し、素材の層と皮膜の層の密着性(一体の度合い)が非常に高いです。
つまり、とても剥がれにくく、傷付きや腐食もしない層が出来上がるのです。
ちなみにこのアルマイトの層はナノレベルの微細な孔が無数に空いていて、そこに染料を染み込ませることでカラーバリエーションのある皮膜にすることもできます。
アルマイトの層は素材から一転して電気を通さず、アルマイトをしたアルミニウム製品は絶縁体となります。
表面が硬くなる反面、アルマイト後に強引に曲げようとしたりすると、変形せずにクラックが発生してしまうので、加工後の表面処理をお勧めします。
1.3. アルミニウムへの主なメッキの種類と性質

メッキは素材の表面に他の金属皮膜を付着させる表面処理です。
メッキという方法自体は、アルミニウム素材以外の素材でも広く使うことができます。
製品表面の性質は、付着させた金属皮膜の性質になります。
ただし、いわば素材に他物質を乗せて層を作るような方法なので、密着性はアルマイトに比べると低くなります。
また、表面の色は基本的に皮膜金属の色で、カラーバリエーションはほとんどありません。
アルミニウム素材に行うメッキとしてよく挙げられるのは、無電解ニッケルメッキ、スズメッキ、金メッキ、硬質クロムメッキなどです。
無電解ニッケルメッキは、硬度をとても高くすることができ、摺動部といわれる部品同士が動いて素材だと削れてしまうような箇所にも活用されます。
また、この方法は複雑な形状への皮膜の均一性が高く、寸法精度などが厳しい精密部品への適用もしやすいです。
スズメッキは、はんだ付け性が高く、アルミニウム素材にはできないはんだ付けを可能にするため、電子回路などで活用ができます。
金メッキは、コネクタ端子などさらに高い導電性などが必要なときに利用します。
硬質クロムメッキは、無電解ニッケルメッキより硬度が高く、高い圧力で摺動する部品などでこちらを選択することもあります。
2. 徹底比較!アルマイトVSメッキ
2.1. 耐食性

ここからはアルマイトとメッキというアルミ素材への2つの表面処理を比較してみましょう。
まずは耐食性です。
耐食性を重視したい場合、メッキは無電解ニッケルメッキを選択することが多いので、主に無電解ニッケルメッキで比較します。
アルマイトの表面皮膜は、空気中で錆びにくい性質も十分持っていて、一般的な屋外仕様の製品でも問題なく利用できます。
また、異種金属を接触させた際のガルバニック腐食も完全に防ぐことができます。
ただし、アルマイトの皮膜では酸やアルカリ環境に弱く、皮膜そのものが溶解してしまいます。
また、アルマイトの皮膜は熱環境でクラックが発生して壊れてしまうこともあります。
無電解ニッケルメッキの場合、普通の屋外環境や塩害環境でも十分な耐食性を持つ上に、酸やアルカリの環境にも強いです。
例えば、製品がコンクリートに触れるシーンなどは、アルカリ環境になるので無電解ニッケルメッキがお勧めです。
熱環境でも無電解ニッケルメッキの方が皮膜が安定します。
腐食を考える場合、通常環境ならはアルマイトで良いけど、周辺環境に応じてメッキの選択も視野に入れるような位置付けになります。
2.2. 硬度

アルミニウムの硬度は、ビッカース硬度が純アルミニウムで20〜45Hv、アルミニウム合金で150Hv程度で、これはとても低い値です。
主に防食を目的とした普通アルマイトでも、これを200〜300Hvまでは上げることができ、日用品程度ならこれでも良い効果をもたらしてくれます。
アルマイトの層をよりゆっくり緻密に生成する硬質アルマイトは400〜600Hvとなり、摺動部での適用も可能となります。
無電解ニッケルメッキは、基本的にアルマイトより硬度が高く、メッキしたままの状態でも500Hv程度の硬度があります。
この状態から熱処理を行うと、800〜1000Hvと工具鋼並みの硬度になります。
摺動部品で、滑らかな動きも実現させたい場合は、硬質クロムメッキという選択肢もあります。
硬度も比較的広い範囲でアルマイトが適用可能ですが、特別な硬さや接触状態を考慮する場合はメッキということになります。
ただし、皮膜自体の密着性はアルマイトの方が強いので、皮膜自体が仮に削れても、剥がれなければ良いという場合はアルマイトに分があります。
2.3. 電気特性

電気特性はアルマイトとメッキで目的が180°変わります。
アルマイトの皮膜は完全に電気を通さない絶縁体です。
これに対して、金メッキや銀メッキをすることにより、アルミニウム素材を極めて通電性の高いものに変えることもできます。
この部分は製品の用途が電気を通すべきものか遮断すべきものか、目的に応じて使い分けることが大切です。
なお、無電解ニッケルメッキでもある程度の通電ができます。
また、前述のとおり、はんだ付けが必要な場合はスズメッキを選択すると良いです。
2.4. その他(見た目やコスト)

アルマイトの外観は、そのままだと金属光沢がある程度の見た目ですが、染料を利用したカラーバリエーションが豊富です。
色付きの製品を作りたい場合は、アルマイト一択となります。
なお、カラーバリエーションが豊富なのは普通アルマイトで、硬質アルマイトは濃色のみの選択肢に限られてきます。
メッキは基本的にその皮膜で用いる金属の色のみで、多少の光沢の度合いを選べる程度です。
コストを比較した場合、アルマイトが圧倒的に有利です。
特に普通アルマイトは、大量一括処理が可能なラインが組み込まれている場合もあり、群を抜いてリーズナブルなコストになります。
メッキの場合、前処理などの手間も増えるため、いずれの種類もアルマイトより高額です。
特に金メッキや銀メッキなど、皮膜金属の高価なものは高額になる傾向です。
3. 迷ったときに活用!おすすめシーン
3.1. アルマイトが絶対的におすすめのシーン

ここまでご紹介したような性質を踏まえると、自ずとアルマイトとメッキの使い分け方も考えてゆくことができます。
アルマイトが絶対的に優位となるシーンはいくつかあります。
まずはその製品や部品が電気を通したくないときで、これは絶縁皮膜を生成するアルマイトの選択がお勧めです。
デザイン性特にカラーバリエーションを豊富に揃えたいときもアルマイトです。
硬度や耐摩耗性はアルマイトもメッキも強いものがありますが、皮膜自体の剥離を絶対に避けたいのであれば、(硬質)アルマイトの方が有利です。
また、三価クロムなど一部メッキ皮膜に用いる金属は環境規制の対象になっている物もある一方、アルマイトは環境負荷はほとんどありません。
3.2. メッキが絶対的におすすめのシーン

メッキが優位となるシーンは、何といっても導電性です。
表面処理したい製品や部品に電気を通す必要がある場合、導電性の機能を付与するメッキで対応するしかありません。
その結果、軽くて丈夫な導電体という非常に使い道の多い素材を作ることができます。
また、はんだ付け性を付与したいときはスズメッキが有効です。
表面の硬度そのものを鉄以上に硬いものにしたいような場合は、無電解ニッケルメッキ+熱処理や硬質クロムメッキが必要です。
使用環境が酸やアルカリ環境の場合、アルマイトでは耐久性は保てず、無電解ニッケルメッキなどが適しています。
なお、無電解ニッケルメッキの方が皮膜の均一性も高く、複雑形状や精密部品にも適しています。
3.3. 迷ったときの選定チェック

アルマイトとメッキのどちらの方法を選択をしたらよいか迷うときは、3つの点に主眼を置きましょう。
① 電気を通すか通さないか。
これは「通す」ならメッキ(無電解ニッケルメッキなど)、「通さない」ならアルマイトで明確です。
② 物理的接触が摩耗か荷重か。
接触して激しく動く部材の場合、摩耗は大きい一方で硬度自体はさほど要求されない可能性があり、その場合は摩耗には強くて剥がれにくい硬質アルマイトがベストです。
強い力で叩かれたり、荷重やインパクトが大きい箇所は、とにかく硬度そのものを確保するために無電解ニッケルメッキ+熱処理か硬質クロムメッキがお勧めになります。
③ 見た目やコストと用途のバランス。
色のバリエーションにこだわりたいとき、安く仕上げたいときなどを含めて、普通アルマイトでも十分に事足りるシーンは多いです。
ただし、使用環境で酸やアルカリが影響する場合は、カラーバリエーションやコストをある程度諦めて、無電解ニッケルメッキを選びましょう。
4. 使用例の紹介
4.1. スマートフォン・ノートPCなどのアルミケース(アルマイトの例)

いくつか実際のアルマイトやメッキの採用事例をご紹介します。
スマートフォンやノートPCのアルミケースは、毎日のように手に持って使用することから、軽くて強いものである必要があります。
一方で、日常生活程度の負荷で傷が付いたり、手の汗などによる腐食が心配されます。
このような使用環境であれば、耐食性や硬度は普通アルマイトで十分です。
ケースなので、絶縁の性質がむしろ望ましい状況です。
また、普通アルマイトなら、このような製品によくあるカラーバリエーションも豊富に取り揃えられます。
4.2. 電気自動車などのバッテリー周辺部品(メッキの例)

電気自動車に使用される部品も軽量であることが求められ、アルミニウムは重宝されます。
バッテリー周辺部は大きな導電性が必要となり、表面処理としてはメッキを選択することになります。
このようなシーンでは、下地に無電解ニッケルメッキを行い耐食性と素材との密着性を確保した上で、表面に金メッキなどをさらに重ねることもあります。
はんだ付け性が必要な場合は、スズメッキも有効です。
4.3. 半導体・精密機械の複雑な可動ブロック(メッキの例)

半導体製造などで用いる精密な可動ブロックには、軽くて俊敏に動けることから、アルミニウムが使われます。
ただし、十分な耐摩耗性があること、精密な位置決めができることなども重要になり、表面処理が必要になります。
アルマイトなどの方法だと、精密な部品の表面処理の場合に通電条件によって皮膜の均一性が保たれにくく、均一性の高い無電解ニッケルメッキが最適法となります。
熱処理を行うことで、非常に強固で精密なブロックにすることができます。
5. まとめ

アルミニウムへの表面処理として、アルマイトとメッキを比較しました。
以下はそのまとめです。
・アルミニウムは軽量高強度で加工性も高く、多くの製品に素材として用いられるが、いくつかの弱点を補うためにアルマイトやメッキといった表面処理が行われる。
・アルマイトはアルミニウムのみに行える表面処理で、アルミニウム素材より高い耐食性や硬度を持ち、電気は通さない。
・メッキは皮膜の金属によって性質が異なるが、アルミニウム素材に対してアルマイトより高い硬度を持たせたり、導電性の高い部材にすることもできる。
・酸やアルカリの環境であれば、メッキを選択した方が良い。
・コスト面ではアルマイトが圧倒的に優位で、さらにアルマイトだとカラーバリエーションも選択できる。
・使用シーンやデザイン性、コストなどを考慮し、適切な表面処理を選択することが大切である。





