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2024.03.08

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【メッキ技能士直伝】無電解ニッケルメッキの原理から用途などまで解説

無電解ニッケルメッキは、化学的な還元反応を利用して金属ニッケルを析出させる無電解メッキです。電気メッキとは異なり、電流を使用しないため、複雑な形状の物体にも均一なメッキ膜を形成することができます。

本記事では、無電解ニッケルメッキの原理、特徴、用途、そして最新技術まで、あらゆる側面を網羅的に解説します。


1.無電解ニッケルメッキとは?

1.1. 無電解ニッケルメッキの原理

無電解ニッケルメッキとは、素材の表面にニッケルの皮膜を付着させるニッケルメッキの一つです。

ニッケルメッキというと、メッキ工程で電極を用いて電流を流し、ニッケル皮膜を生成させる電解ニッケルメッキが有名ですが、無電解ニッケルメッキは電気を使いません。

無電解ニッケルメッキの原理は以下のとおりです。

メッキ液の中に還元剤が含まれており、まず、素材をメッキ液に浸すと素材そのものが触媒となり、電子を放出します。

すると、この電子を利用して、メッキ液内に含まれているニッケルイオンが素材に析出してゆきます。

その後はニッケル皮膜自体が触媒となり、皮膜が成長してゆくという要領でメッキが進んでゆきます。

即ち、無電解ニッケルメッキは化学的な現象のみでメッキを行う方法となります。

1.2. 無電解ニッケルメッキの特徴

無電解ニッケルメッキの特徴として、皮膜の均一性があります。

電解ニッケルメッキの場合、電極を利用することから、その位置関係によってどうしてもメッキにムラができてしまいます。

無電解ニッケルメッキでは、このムラができないのです。

また、皮膜はニッケルとリンの化合物で構成されるのが一般的で、大まかに言うと硬くて錆びにくい皮膜です。

したがって、耐食性や硬度、耐摩耗性といった目的で無電解ニッケルメッキを行う場合が多いです。

皮膜には通電性などの特徴もあり、はんだ付け性にも優れています。

1.3. 無電解ニッケルメッキの種類

無電解ニッケルメッキにはいくつかの種類があります。

皮膜の構成によって分類分けすると、無電解ニッケルメッキはニッケルとリンの化合物で構成される無電解ニッケル-リンメッキとニッケルとホウ素の化合物で構成される無電解ニッケル-ボロンメッキがあります。

無電解ニッケル-リンメッキは、リンの含有率によっても分類されることがあります。

色による分類もでき、通常の飴色シルバーの無電解ニッケルメッキの他に、黒色無電解ニッケルメッキもあります。

黒色無電解ニッケルメッキは、メッキ表層を酸化または硫化させることによって表層を黒く処理する事が可能です。

また、テフロンなどを無電解ニッケルメッキに複合させ、撥水性や離型性を良くしたテフロン複合無電解メッキも種類の一つとして挙げられます。

2.無電解ニッケルメッキのメリット

2.1. 均一なメッキ膜形成

ここまでご紹介してきた無電解ニッケルメッキには、さまざまなメリットがあります。

特に有意なメリットとして挙げられるのは、均一なメッキ膜です。

前述のとおり、無電解ニッケルメッキは電極を用いず、化学反応のみで皮膜を生成します。

したがって、素材のどの位置においても反応は同じで、生成する皮膜の厚みや成分にバラツキはできません。

析出速度といわれる皮膜の生成時間も均一なため、時間はかかるものの、その反応時間を測定することで、ほぼ正確に所望の膜厚を得ることもできます。

正確な膜厚を得ることが可能となるため、寸法精度が厳しいような部品のメッキであっても、その要求に応えることができます。

2.2. 複雑な形状へのメッキ

均一性と似たような理由ですが、無電解ニッケルメッキは素材の形状を選びません。

複雑な形状であっても、メッキ液内に浸っている限り、化学反応は公平に行われるため、入り組んだところにはメッキが行き届かないというようなことは起きません。

寸法精度と形状精度ともに高いため、細かい精密部品などにおいては無電解ニッケルメッキでないと対応できないものもあります。

2.3. 低温でのメッキ

無電解ニッケルメッキの処理温度は90℃程度です。

さまざまなメッキの種類の中には処理温度が高温のものもあり、例えば溶融亜鉛メッキなどは400℃を超える処理温度になるので、比較的低い方です。

処理温度があまりに高いと、素材によっては組成が変わってしまったり、変形や破壊の恐れがあります。

一方で、無電解ニッケルメッキは金属素材以外の樹脂材などにメッキができるという大きな特徴があります。

樹脂材の場合、90℃の処理温度でも厳しいメッキ環境となります。

そのようなときは、低温タイプのさらに低い処理温度での無電解ニッケルメッキを行うことも可能です。

2.4. 合金メッキの形成

無電解ニッケルメッキはそれ自体、基本的な皮膜の組成としてニッケルとリンの合金で形成されており、高い耐食性と硬度を持っています。

皮膜の性質は、皮膜の中のリンの含有率でも変わります。

例えば、リンの含有率が高ければ、耐食性が高めで硬度はさほど高くありません。

逆に、リンの含有率が低ければ、耐食性はさほど高くないものの硬度が高いです。

また、合金の種類としては無電解ニッケル-ボロンメッキもあり、とても高い硬度を実現できます。

その他にもニッケルとの合金の形成は可能で、無電解ニッケル-銅-リン、無電解ニッケル-リン-タングステン、無電解ニッケル-リン-ホウ素-タングステンなどがあります。

3.無電解ニッケルメッキのデメリット

3.1. メッキ速度が遅い

無電解ニッケルメッキには、メリットだけでなくデメリットもあります。

典型的なデメリットは、メッキ速度が遅いということです。

原理で述べた通り、無電解ニッケルメッキの皮膜の生成は、化学反応の進展を待つ以外に方法がありません。

膜厚の管理は適正なメッキ浴に素材を浸し、析出速度を見極めて時間を計測することで管理します。

電解メッキなどに比べると析出速度は遅く、メッキにどうしても時間がかかってしまいます。

また、その影響でコストも上がってしまうデメリットがあります。

3.2. 膜厚の制御が難しい

似たようなデメリットとして、膜厚の進展を司るパラメータが析出速度と時間ぐらいしかありません。

例えば、電解メッキなら電流を調整することでメッキ納期の管理などはしやすいのですが、無電解ニッケルメッキではそのあたりは難しくなります。

納期に余裕を設ける必要がありますが、前に述べたとおり、ゆっくりと均一に進展する膜厚のおかげで、寸法公差などにはむしろ対応しやすくなります。

なお、そのような背景で無電解ニッケルメッキの皮膜は電解ニッケルメッキの皮膜より緻密になり、ピンホールなどの発現も少ないです。

融通はきかせにくいけど、確実な機能性があるようなイメージを持っていただくと良いかもしれません。

3.3. 処理液の管理が重要

無電解ニッケルメッキの処理液には、多くの薬品で組成されています。

前述の還元剤の他に、ニッケルイオンの供給源である金属塩、促進剤、安定剤などです。

これらの配合を間違えてしまうと、適切なメッキを行うことができません。

したがって、処理液の管理にはとても気を使うことになります。

また、一度に処理できる素材にも限りがあります。

これを浴負荷といいますが、あまり浴を無理させてしまわないよう、浸す素材の管理もしておく必要があります。

なお、昨今では安定剤などに鉛成分を使用することも環境への配慮から不可能で、環境に優しい浴組成にも気を配る必要があります。

4.無電解ニッケルメッキの用途

4.1. 電子機器

無電解ニッケルメッキはさまざまな用途に応用されます。

ここでは、いくつかその用途のご紹介です。

まずは電子機器です。

無電解ニッケルメッキの皮膜は通電性があります。

はんだ付け性やろう付性も高く、耐食性も併せ持つことから、電子部品やコンピュータ部品などのメッキに用いられることがあります。

また、均一性も高いことから、プリント基板にも用いられます。

非磁性の性質を持たせることも可能で、やはり均一性と相まって、ハードディスクの下地メッキなどにも活用されています。

4.2. 自動車部品

機械の中で他の部品と接して動く箇所を摺動部といいます。

このような箇所は、どうしても他の部品との接触から摩耗してしまうことが多いです。

金属の摩耗を防ぐには、表面を硬くしておく必要があり、これを耐摩耗性といいます。

無電解ニッケルメッキの皮膜は硬度が高いことから、耐摩耗性が高く、なおかつ寸法精度も高く仕上げることができます。

このことを利用して例えば自動車部品などに多く利用されています。

ディスクブレーキ、ピストン、シャフト、ベアリング、歯車などです。

また、似たような理由や耐食性も良いことから、船舶や航空機で用いられることも多いです。

4.3. 医療機器

無電解ニッケルメッキは耐食性もさることながら、薬品に反応しない耐薬品性も持っています。

このような性質は、医療機器などでも活用できます。

歯科用器具などにはこのような耐薬品性や耐摩耗性などの性質が利用されています。

耐薬品性は、他にもバルブやポンプなど、化学プラントの部品で利用されることもあります。

4.4. 光学機器

無電解ニッケルメッキは寸法精度の要求に答えやすく、耐食性や耐摩耗性も高いのはここまでご説明してきた通りです。

このような性質は、光学機器など精密部品にも応用されます。

カメラ部品やコピー、プリンタなどへの応用も可能です。

また、カメラレンズカバーなどに黒色無電解ニッケルメッキの皮膜を利用する場合もあります。

4.5. その他

その他にも、無電解ニッケルメッキの活躍は多分野に渡ります。

樹脂成形用の金型、精密機械の部品、食品分野、工作機械等です。

広く利用される無電解ニッケルメッキのさらなる活躍分野を、是非開拓してみてください。

5.まとめとお問い合わせ

5.1. まとめ

無電解ニッケルメッキについてさまざまな観点からご説明してきました。

以下はそのまとめです。

・無電解ニッケルメッキは通電を行わないメッキである。

・無電解ニッケルメッキは耐食性や硬度に優れている。

・無電解ニッケルメッキは均一な皮膜を生成し、寸法精度の要求に応えやすい。

・無電解ニッケルメッキは複雑な形状のメッキも行うことができ、精密な部品などへのメッキも可能である。

・無電解ニッケルメッキにはメッキ速度が遅いなどのデメリットもある。

・さまざまな分野で無電解ニッケルメッキが用いられている。

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