メッキの密着性を向上させるためには
メッキ皮膜と素地金属との密着性は、素地金属上へのメッキの初期析出過程と深く関わっています。
透過電子顕微鏡によるメッキ皮膜の断面観察結果では、メッキの初期には素地金属とメッキ皮膜とは原子レベルで整合性をとるために、ミスフィット転位やミスフィット双晶等の格子欠陥が形成されることが明らかにされ、素地金属とメッキ皮膜界面構造が密着力に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。
さらに、メッキ初期析出過程において、非常に大きなメッキ応力が発生することが知られており、ある大きさ以上の引張応力が発生した場合にはメッキ皮膜がはく離しやすく、同様に大きな圧縮応力が発生した場合にはメッキ皮膜に経時ふくれが発生しやすいと考えられていいます。
メッキ応力の制御のためのメッキ浴組成(光沢剤、不純物等)及びメッキ条件(電流密度、PH、かく拌、ろ過、陽極等)の充分な管理が必要となります。
現場的には、前処理浴あるいはメッキ浴中への銅イオンなどの不純物の蓄積に起因する置換析出によるメッキ皮膜の密着不良が発生することがあります。
これらの事から処理液の劣化度の判定や、素材の表面清浄度の評価方法の確立が重要となります。
また、酸化物皮膜の除去のため短時間の陽極処理や電流反転等の電流波形制御も密着性改善に効果的です。
また、難素材へのメッキで最も効果的な方法としては、ウッド浴からのニッケルストライクメッキや通常のメッキ浴組成濃度を低くし大電流でメッキを行なう銀ストライクメッキや銅ストライクメッキ等、各種ストライクメッキが密着性改善に著しい効果があることがよく知られています。
ステンレス上へのニッケルストライクメッキの密着強度に及ぼす電流密度の影響
電流密度が3A/dm2以上になると陰極表面還元作用が急激に大きくなり、素材表面に極めて薄いニッケルに置き換えるため、各種の難メッキ素材への密着性の改善に大きな役割を果たしています。
りん青銅上へのスズメッキの経時はく離の模式図
りん青銅上へのスズメッキのように、メッキ処理直後には密着性が良好であったものが、拡散などの熱的過程を含む金属学的な変化により、経時的に密着性が低下してはく離する経時剥離の原因としては、素材であるりん青銅中の銅及びりんがスズメッキ層中に拡散し、スズメッキ層側に金属間化合物形成します。
この時素材とメッキ層の界面で、お互いの原子の相互拡散速度の差異に基づいて、ボイド(空孔)が形成され、はく離が発生すると考えられています。
このような原子の相互拡散速度の差異に基づいて形成されるボイドをカーケンドールボイドと呼ばれています。
こうした各種元素の拡散に起因する経時はく離には、拡散を防止する中間層を設けることにより密着性の低下を防ぐ事が可能です。
めっきに関するお問い合わせやご質問などございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡下さい。
メッキ加工であなたの嬉しいを実現
株式会社コネクション
めっき総合サイト
アルミニウムへの無電解ニッケル専門サイト
Comments