メッキ皮膜中に炭素(C)、ほう素(B)、燐(P)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などを共析すると硬さが向上することが知られております。
これらの合金メッキは非晶質構造であったり、熱硬化性を示す合金メッキが多いのが特徴です。
Ni-B合金メッキ,Ni-P合金メッキは電解や無電解法で容易に得られ、Ni-B,Ni-Pどちらの皮膜も電解で得られるニッケルメッキより硬く、熱処理により析出状態よりも硬化することが知られています。
また、Ni-W合金メッキは熱処理を行う事でクロムメッキより硬い皮膜となります。
クロムメッキでも皮膜中に炭素を2~3%共析させると、皮膜は非晶質となり、熱処理によりその硬さは急激に上昇します。
ほう素(B)、燐(P)系合金メッキ
次亜リン酸ソーダを還元剤とする無電解ニッケルメッキが開発された頃は熱処理を施す事でメッキ皮膜の硬さがHV1000前後に達することから、硬質クロムメッキの代替メッキとして期待され、さまざまな応用の試みがなされましたが、硬質クロムメッキの硬さ、それ以外の優れた特性を満足する特性が得られず代替えとしての普及は進んでおりません。
別の用途として、皮膜の均一性や耐食性、非磁性などの特性を生かした新しい需要が増し、精密機械の部品をはじめエレクトロニクス関連分野でその需要を大幅に伸ばしています。
この皮膜の特徴はメッキ析出状態のままでも、通常の電気ニッケルメッキより硬く、クラックやピンホ一ル等の欠陥が極めて少ない皮膜が得られることにあります。
開発当初はコストが高いのが欠点でしたが、最近では大幅にコストも低下しています。
しかし、無電解ニッケルメッキは定期的にメッキ液を廃棄しなければならず、廃液の処理が大きな課題となっています。
無電解ニッケルメッキに熱処理を施すことでメッキ皮膜は結晶化し、皮膜硬度が上昇します。
熱処理を行う事で皮膜硬度が上昇しますが、皮膜が0.1%程度収縮するため微小割れを生じ耐食性が低下する欠点があります。
そこで熱処理温度を抑えることで、硬さの上昇を抑えると共に微小割れを防止する工夫もされています。
皮膜硬さと耐摩耗性は一般に相関性が認められています。
前述のように熱処理を施した無電解ニッケルメッキは硬質クロムメッキとほぼ同じ硬さとなりますが、無潤滑摩耗試験では一般に摩耗量が多くなります。
これはクロムメッキの摩擦係数の低さと、凝着摩耗を抑制する自己潤滑性の酸化皮膜(Cr2O3)の存在によるものと考えられています。
3%以上のホウ素を含むNi-Bメッキはメッキ析出のままでも硬度が高く(HV850)、ジェットエンジン部品やガラス成型用金型、自動車のクラッチ組立部品のような温度の上昇する部分に使われています。
Mo,W系合金メッキ
モリブデンやタングステンは単独では電析しませんが、NiやCo,Fe等とは共析します。
Brennerらはこれを誘起共析と呼んでいます。
これらの合金は硬く、耐摩耗性に優れているので、古くから種々の分野で利用されています。Wを多量に含む(40-50wt%)メッキ皮膜が開発され、従来のNi-W皮膜より優れた物性を有することから注目されています。
また、これらの合金は非晶質構造をとるものが多く、加熱により結晶化します。
この時、生成する微細析出物による析出硬化で皮膜は硬くなり、いずれも熱硬化性を有するのが特徴です。
Ni-W合金メッキ
Ni-W皮膜は600℃でHV1000と硬いことと、高温時の耐摩耗性や熱衝撃性に優れていることから、ブラウン管の成型金型などに利用されていました。
これはタングステンを多量に含むNi-Wメッキは耐酸化性に優れているためと考えられています。
Fe-W合金メッキ
Fe-W合金メッキは析出状態でHV1000、熱処理を施す事でHV2000にも達します。
これらの事から切削工具への応用が試みられています。
その他
炭素系合金はクロムメッキの項でCr-Cについて述べましたが、Fe-C系のメッキ浴が検討されています。
Fe-C系のメッキ皮膜は、黒味のある光沢外観を有し、皮膜硬さは炭素含有量0.6%で最大便さHV850を示し、構造は体心立方晶のマルテンサイトとなります。
今後の実用化に向けての研究が期待されています。
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