スズめっきはその特性として柔らかく、延性があり、融点が低く、固定金属と固体金属のはんだ付け性、しゅう動部のなじみ性に有効であることから、電子部品や自動車、飛行機などから産業用製造装置など幅広く利用されています。
そんな優れた特性を持つスズめっきですが、ウイスカと呼ばれるヒゲ状単結晶が発生する場合があります。このウイスカが問題になる場合がありますので原因、対策を説明します。
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スズめっきの歴史
スズめっきの歴史は、紀元前16世紀の北部メソポタミアでは鉄器などへのスズめっきが行われていたとされています。
1970年代に入ると電気・電子部品工業における生産量の急速な伸びと携帯電話、情報端末機器などの電子機器の小型化に伴い、電子部品の小型化とセラミックスまたはガラスなどの絶縁材料がメッキ部分が一体となったチップ部品が増大するようになりこれらの事からスズめっきは用途を広げ幅広く利用されるようになっております。
そんな幅広く利用されているスズめっきですが、ウイスカと呼ばれるひげの発生が問題となる事があります。
スズめっきのウイスカ(ひげ状単結晶)とは
スズめっき層からウイスカと呼ばれるひげ状のスズ単結晶が徐々に自然成長することがあります。
このウイスカとはほおひげまたは、動物のひげの事を表すのですが、その形状や発生の仕方がひげのようであることから金属やその他の固体の細線状の結晶成長をウイスカと呼んでおります。
ウイスカの直径1〜10μmで長さはその1000倍(1mm)にも達する事があるため、短絡事故の原因になる事が昔からの課題となっております。
ウイスカの発生原因は圧縮応力
スズめっき皮膜中に不均一な圧縮応力が働いている時、これを開放するためにスズの再結晶とスズ原子の拡散が起こり、最終的に薄い酸化皮膜を突き破ってウイスカが成長すると考えられます。
圧縮圧力の原因5項目
めっきの電着応力
素地とめっき皮膜との界面での金属間化合物層成長による体積膨張
酸化皮膜の成長による体積膨張
機械的な応力
めっき皮膜と素地との熱膨張係数の違いに起因する温度履歴による応力
スズ・スズ合金めっきの今後の課題
電気、電子部品におけるはんだ付け性の改善を目的とした鉛フリーはんだめっきでは、ウイスカ(ヒゲ状のスズ単結晶)の発生しないスズメッキ皮膜の開発やスズメッキをベースにビスマス、銅、銀、亜鉛などの合金メッキが開発され、合金化することでスズメッキ単体の皮膜よりも低融点でウイスカ発生抑制に期待されています。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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