ウイスカとは
ウイスカという言葉は「ほおひげ」「動物のひげ」の事を表します。
ウイスカとは、金属表面に金属単結晶が自然成長する現象のことで、めっき処理された製品で、ひげ状の結晶成長が発生する場合があり、このひげ状の結晶成長したものがウイスカ(ウイスカー)です。
このウイスカですがスズめっき・亜鉛めっき・カドミウムめっきなどに発生する事が知られています。
ウイスカについて歴史的な部分も含めご説明させて頂きます。
■INDEX■
ウイスカの歴史と現在までの経緯
ウイスカの発見は1940年と古く、発見後さまざまな研究が行われました。
ウイスカ自体はめっき皮膜の性能低下に影響するわけではありませんが、すずめっきなどを施す製品側の回路の複雑化、部品の小型化などで部品同士の距離が近くなったことや、回路同士の距離も近くなった事によりウイスカが発生することで、部品同士や回路同士が繋がる危険性が出てきた事で問題視されるようになりました。
当初は無光沢スズめっきを使用しておりましたが、耐食性や外観の悪さからカドミウムめっきが変わって広く使用されました。その後光沢スズめっきが開発され、はんだ付け性、耐食性、外観性に優れた皮膜が得られるようになった事、1970年にカドミウム公害の問題が発生したことなどから光沢すずめっきがカドミウムめっきに変わって広く使われるようになりました。
イタイイタイ病とは
1970年に発生したカドミウム公害の問題とは、イタイイタイ病です。イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で起きた日本の四大公害病の一つで、患者が「イタイ、イタイ」と泣き叫ぶことからこの名が付いたといわれています。
この病気は、大正時代頃から発生し、神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から排出されたカドミウムが神通川の水や流域を汚染し、この川水や汚染された農地に実った米などを通じて体内に入ることで引き起こされました。
ウイスカ発生防止の研究再開
光沢スズめっきカドミウムのような公害問題はありませんが、無光沢スズめっきに比べウイスカが発生しやすいことから、ウイスカによる問題が発生しました。
その頃ウイスカ抑制の研究が頻繁に行われましたが、十分に解明されないまま、数%の鉛を添加する事でウイスカが抑制できることが判明した事から、スズと鉛の合金めっき(ハンダめっき)の活用が世界中に広がりました。
スズ鉛の合金めっきにする事でウイスカが抑制される事が判明した事から1990年頃までウイスカ発生防止の研究は一旦終息してしまいました。
1990年頃までウイスカ発生防止の研究は終息しておりましたが、2003年2月にRoHS指令が制定され、使用制限物質として鉛が含まれた事から、鉛フリー化を推進せざるを得なくなり、結果としてスズめっきのウイスカが再び問題視されるようになりました。
2000年頃には亜鉛めっきのウイスカがコンピューター故障の原因となり大きな問題となりました。
まとめ
以下本記事のまとめです。
ウイスカとはひげ状の結晶成長したものです。
ウイスカの発生により皮膜の特性などが問題になるのではありません。
ウイスカの問題はウイスカにより回路同士が繋がってしまい回路の短絡(ショート)の原因になることが問題です。
スズ鉛合金めっきにする事でウイスカは抑制されるが、環境問題の観点から鉛フリーでの対応が必要。
スズめっき以外にもカドニウムめっきや亜鉛めっきにもウイスカが発生することが知られている。
株式会社コネクションにてスズめっきのウイスカ対策可能です。
ウイスカ対策をご検討の際はお気軽にご相談ください。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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