「メッキ」という技術は古くから存在する技術です。
「メッキが剥がれた」というと、上辺だけで体裁を保っていたものの本性がバレてしまったというような意味で、あまり良い意味で使われるものではありません。
しかし、技術として現在までに確立されているメッキ加工処理は、決して上辺だけではない、明確な形で私たちの生活を支え続けています。
実は私たちの身の回りには、メッキ加工処理を経て製品化されているもので溢れています。
決して主役になる技術ではないですが、メッキがなければ現在身の回りにある製品で、成立していないものも少なくありません。メッキ加工処理は分野でいうと、表面処理技術になります。
本記事では、メッキ加工処理の基本的な説明を、他の表面処理技術との比較などを交えてご紹介します。
メッキとは何か?メッキをしたら何が得なのか?あらためて知る良い機会にお役立てください。
■INDEX■
・メッキとは
・メッキに使用する金属
・耐食性の付与
・機能性の付与
・装飾性の付与
・電解メッキ
・無電解メッキ
・その他の種類
・メッキ以外の表面処理
・メッキと他の表面処理との違い
1.メッキ加工処理とは
1.1.メッキとは
材料の表面に加工を行うことを表面処理加工といいます。
たかが表面と思いがちですが、表面を処理することで、見た目だけでなくさまざまな機能が付与され、製品の質の向上に繋がります。
典型的な例だと、錆びついたり腐食しやすい金属の耐食性が向上し、製品の耐久性を上げることができます。その他にも硬度を上げたり、電気的特性や熱特性などを付与することもできます。このような表面処理技術の中でも、最も広く使われているものがメッキです。
メッキとは、素材の表面に金属の皮膜を付着させる技術です。
実はその歴史は古く、人類の歴史の中でも紀元前の時代から用いられていたことがわかっています。
現代社会においても、メッキは多くの製品や構造物に使われている技術で、知らず知らずのうちに私たちの生活の質も向上させてくれている重要なものです。
メッキ自体にもさまざまな種類があり、それに応じてさまざまな役割もあります。
メッキのさまざまな種類や目的について、本記事では詳しくご説明してゆきます。
1.2.メッキに使用する金属
メッキにはさまざまな金属が使用されます。
メッキの呼び名として〇〇メッキと言った場合、〇〇に入る言葉は金属であることが多く、その言葉が皮膜に用いられている金属の種類になります。
比較的よく知られたものとして、金メッキや銀メッキなどがあります。
金属によって性質が異なるように、皮膜に用いられる金属の種類によっても付与される機能が異なります。
メッキに用いられる金属として代表的なものは、金、銀、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズなどです。多くの種類の中から、目的に応じて使用する金属皮膜を選択し、さらにその加工方法も選択してゆくことになります。
例えば金メッキであれば、御存知の通りの美しい見た目が特徴的です。
しかし、実はそれだけでなく、金メッキの皮膜は優れた耐食性や電気伝導性、熱伝導性なども持ち合わせています。
極端な話、目に見えないような見た目を重視しない場所においても、金メッキを行うことで有効性が増すこともあります。もちろん、銀でも銅でもその他の金属でも、同じことが言えます。
メッキが付与できるさまざまな機能性については、このあと詳しくご説明します。
2.メッキ加工処理の目的
2.1.耐食性の付与
ここからはしばらく、メッキが持っているさまざまな機能についてご説明します。
これは即ち、メッキを行う目的ということになります。メッキを行う目的として最も典型的なのは、耐食性です。身の回りの製品や構造物でよく用いられる金属は、強度が高くすぐには壊れにくいものが多いのですが、腐食などに弱い物質もあります。鉄鋼製品などはその代表的な例です。
せっかく構造的に強い材料で作っていても、長持ちせずに錆びついて壊れてしまっては、使用する意味は半減してしまいます。このようなときに防食目的のメッキは大活躍します。
その名の通り、表面の金属皮膜によって本体の構造を錆や腐食から守ってくれる役割です。
例えば、鉄鋼材料に行うメッキとしては亜鉛メッキやスズメッキがあります。
亜鉛メッキは、鉄鋼材料よりイオン化傾向が高く、先に空気との反応が進みます。
すると、本体の鉄鋼は反応せずにそのまま残り、結果的に構造が維持されることになります。このようなメッキを犠牲防食メッキといいます。
また、スズメッキはそもそもが耐食性が高いスズの皮膜で材料を覆う方法です。
こちらの方法では、皮膜に小さな穴でも空いてしまうと、そこから素材の反応が進んでしまうので、注意が必要な場合があります。
なお、亜鉛メッキはトタン、スズメッキはブリキという名前で、それぞれ古くから用いられてきた技術です。
亜鉛やスズの他にも、クロム、ニッケルなど耐食性を目的として用いられるメッキは多く、素材や用途に応じて取捨選択することになります。
2.2.機能性の付与
耐食性の他にもメッキで付与できる機能は多数あります。
中でもよくメッキの目的として多く挙げられるのは、硬度の向上です。
例えば、アルミニウムは軽くて強い便利な素材です。
一方で表面が柔らかいため、すぐに傷ついてしまったり、摺動部で消耗が激しくなったりするという問題点があります。
アルミニウムをニッケルやクロムの硬い皮膜で覆うことで、アルミニウム製品の質を向上させ、耐久性も上げることができます。
また、元々電気を通さないような素材の表面に電気伝導性を付与することができるのもメッキの目的の一つです。
このような機能は、電子部品などによく用いられます。
似たような考え方で、表面に熱伝導性を付与することもあります。
鍋の裏面に金属色の表面処理が行われているものなどは、こういった目的の一例です。
他にも、メッキによって磁性、電磁シールド性、はんだ付け性、潤滑性などを付与するパターンもあります。
2.3.装飾性の付与
もちろん、メッキによる装飾もよく用いられるものです。
金属の光沢や色は、人間の目で見てとても美しさを感じるものです。
したがって、その美しさを利用して見た目を向上させるのもメッキの重要な役割です。
例えば、聞いたことがある話かもしれませんが、オリンピックなどで優勝者に与えられる金メダルは、銀素材へ金メッキを施して作られています。
素材全体を表面の金属で作る必要がない場合は、メッキは見た目を向上させ、コストや重量を抑えることにも寄与します。
もちろん、金だけでなく他の金属皮膜でも装飾性を向上させるものはあり、中には黒色メッキのように金属色以外の色を付けることができるものもあります。
3.メッキ加工の種類
3.1.電解メッキ
今度は、メッキを加工の種類によって分類します。
どのようなプロセスでメッキを行うかによって、同じ金属の皮膜でも、機能が変わることもあります。
まず最初は電解メッキです。
電解メッキはメッキの中でもよく用いられる手法です。
基本的なやり方としては、電解質の水溶液の中で皮膜となるメッキ材料を陽極、素材を陰極にして電流を流します。その結果、陽極の金属イオンが陰極の素材に流れ、付着するのを利用した方法です。
比較的短時間低コストでメッキを行うことができる方法ですが、電極を用いる関係上、均一な皮膜になりにくいというデメリットもあります。複雑な形状の製品にはあまり適していません。
金属皮膜の種類としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズなど多種にわたり、工業用途にも装飾用途にも利用されます。
3.2.無電解メッキ
無電解メッキは電気を用いないメッキです。
電解メッキのようにメッキに伴って電流を流すのではなく、化学反応を利用します。
水溶液内には金属イオンが含まれており、素材を液に浸すだけでメッキ皮膜が付着してゆきます。
さらに細かい種類として、還元剤を用いて化学還元を利用する還元メッキと、溶液で素材が溶けたところに金属皮膜が付着する置換メッキがあります。
還元メッキの場合、最初は素材表面が触媒となり反応が促進され、一旦皮膜が付着しても皮膜自身が触媒となることで、時間経過に応じて皮膜が厚くなってゆきます。
皮膜は均一で、複雑な形状のものにも均等にメッキができます。
電解メッキに比べると、時間やコストはかかってしまいますが、電気を通さない樹脂材やセラミックス材などにメッキを行うことが可能など優れた利点を持っております。
無電解メッキの代表例は無電解ニッケルメッキで、アルミニウム材などの耐食性や耐摩耗性の付与に用いられます。
また、電気特性を生かしてセラミックス基板やハードディスクなどへのメッキとしても用いられ、多方面で活躍しています。
置換メッキは素材が溶けた部分のみの置換となるため、薄い皮膜のメッキとなります。
3.3.その他の種類
電解メッキと無電解メッキ以外にもメッキには沢山の種類があります。
融点が比較的低い亜鉛やアルミニウム、スズなどを高温で液体化し、融点の高い鉄などの素材を浸して皮膜を直接つける溶融メッキはよく用いられる方法です。
特に溶融亜鉛メッキは、建築などの鉄鋼の構造材ではほとんど用いられている代表的な防食方法です。
高温でメッキを行うので、熱の影響を受けやすく、変形もしやすいことには注意が必要です。溶融メッキは、工業用途の耐食性向上に用いられることがほとんどです。
メッキに用いる素材をガス化し、真空の中で蒸着させる真空蒸着メッキという方法もあります。クロームやアルミニウムを蒸着させることができ、工業用途にも装飾用途にも用いられる方法です。
電解メッキや無電解メッキ、溶融メッキのように液体内で行うメッキのことを湿式メッキ、真空蒸着メッキのように液体内ではないメッキを乾式メッキとして分類することもあります。
4.他の表面処理との違い
4.1.メッキ以外の表面処理
表面処理としては、メッキ以外の方法もいろいろとあります。
例えば、塗装もその一つです。
ハケやローラーで塗るような塗装は馴染みのある方法ですが、他にも塗料を霧状に吹き付ける吹き付け塗装、高温の塗料を表面で固化させる焼付塗装などもあります。
また、アルミニウム材においては、表面に酸化皮膜を生成させ、耐食性などを向上させるアルマイト処理という方法もあります。アルマイト処理はさまざまな色を付けることもでき、装飾用途で用いることもできます。
クロメート処理やジンケート処理など、化学的な方法で皮膜を生成させる化成処理という方法もあります。
4.2.メッキと他の表面処理との違い
これらメッキ以外の表面処理方法とメッキでは、どんなメリットやデメリットがあるのか、比較してみましょう。
例えばメッキと塗装の違いです。
メッキは表面に金属が付着しますので、装飾性や耐食性以外にもさまざまな機能性が付与されます。また、メッキは密着性が高く、簡単には剥がれないので、より長い耐久性を見込むことができます。
メッキはメッキを処理する素材を選ぶ上に塗装と比較するとコストは高くなってしまいます。
塗装は主に見た目の装飾性や耐食性の向上のために行います。
塗装は簡単な用具や塗料でもどんな素材にも手軽に行うことができ、そういったものであればそれほどコストも掛かりません。
メッキと塗装を比較しますと、比較的手軽な分機能は限定的な塗装と、手が込んで機能や工業的特性に優れたメッキといった感じでしょうか。
また、装飾用途で考えた場合、メッキはあくまで金属の延長にある色合いが主体となる一方、塗装には多くの色があります。
アルマイト処理にも多くの色があり、そういった意味ではメッキは不利になるかもしれません。
したがって、何にでもメッキが最適というわけではなく、適材適所でメッキや他の表面処理を使い分けることが重要です。
また、メッキの中でも機能や用途の使い分けをする必要があります。
5.メッキのメリットとデメリット
本記事の内容からメッキのメリットとデメリットを抽出すると、以下のようになります。
メリット
密着性に優れていて簡単には剥がれない。
耐食性が高く、製品の耐久性向上に強く寄与する。
金属独自の色合いや光沢を持っている。
装飾や耐食性の用途以外にもさまざまな工業的機能を持ったメッキがある。
デメリット
処理できる素材を選んでしまう。
やり直しにリスクがある
大規模な設備やコストが必要である。
カラーバリエーションなどは限定的である。
製品へのメッキをお考えの方は、このあたりのメリットとデメリットを十分に考えて活用してみてください。
6.まとめ
メッキ加工について、さまざまな種類の紹介やメリット・デメリットについてご紹介してきました。
以下はそのまとめです。
メッキとは金属の皮膜を素材表面に付着させる技術で、さまざまな用途がある。
メッキの目的としては、耐食性、装飾性、他ざまざまな工業機能の付与がある。
メッキには電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなどの種類がある。
皮膜の金属やメッキ方法によって付与される機能性が違うので、目的に応じてメッキの種類を選択することが重要である。
メッキにも多くのメリットとデメリットがあり、用途に応じて他の表面処理との使い分けを行うことも重要である。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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