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メッキをすると寸法は変わる?メッキの膜厚について

更新日:2024年12月23日

メッキとは素材表面に別の金属の皮膜を付着させる技術です。

付着させる金属の性質によって、品物の表面に特定の性質を付与することができます。

表面に皮膜を付着させるということは、その皮膜分の厚さの変化が生まれます。

この皮膜は厚くもできるし薄くもできますが、厚い皮膜と薄い皮膜では何か違いがあるのでしょうか?

厚ければ厚いほどよかったりするのでしょうか?

また、その皮膜はどのようにして管理しているのでしょうか?

本記事では、メッキの一般的な膜厚とその機能について解説します。

メッキの膜厚について調べている方にとっては必見の内容です。


■INDEX■


1.1. メッキとは

1.2. メッキ皮膜の特徴

2.1. 膜厚はどのぐらいの寸法?

2.2. 膜厚の管理方法

3.1. 耐食目的

3.2. 硬度目的

3.3. 電子部品へのメッキ

3.4. 意匠目的

3.5. コスト


 

1. メッキとは

1.1. メッキとは

古くから、人類の技術史の中に存在する技術の一つにメッキがあります。

メッキとは、素材の表面に金属の皮膜を生成させて素材の性質を変化させたり、新たな機能を付与する技術です。

鉄やアルミニウムなどさまざまな素材がありますが、メッキを行うことで品物として機能しているものがとても多く、メッキは現代では必須の技術となっています。

メッキには皮膜の金属によってもさまざまな種類があり、それぞれに対して異なった特徴を持っています。


1.2. メッキ皮膜の特徴

主なメッキ皮膜の特徴は以下のとおりです。

・耐食性:腐食や錆などから素材を守る性質

・硬度:柔らかい素材に対して表面を硬くして素材を傷や変形から守る性質

・導電性:電気を通さない素材に対して表面に通電の性質をもたせる性質

・はんだ付け性:素材に対してはんだ付けをしやすくする性質

・意匠性:品物の見た目を向上させる性質

これらの特性は皮膜の金属によっても異なり、適切な素材に対して適切な種類のメッキを行うことが大切となります。


2. メッキの膜厚

2.1. 膜厚はどのぐらいの寸法?

メッキの膜厚は非常に薄く、nm(ナノメータ)からμm(マイクロメータ)の単位です。

1μmは1mmの1000分の1で0.001mm、1nmはさらにその1000分の1です。

メッキを行うとその分、元の素材と比べると厚みが増えます。

身近な例で行くと、サランラップの厚さが10μm、セロハンテープの厚さが50μm程度なので、メッキを行ったからといって大きく厚みが変わることはありません。

ただし、微小な部品や精密な形状を保たなければならない部品に対しては、その寸法効果を少し考慮しなければならない場合もあります。

なお、後ほど詳しく説明しますが、用途に応じて適切な厚みは異なります。


2.2. 膜厚の管理方法

メッキの膜厚はメッキ業者によって管理することができます。

メッキには電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなどの方法による分類がありますが、それぞれについてメッキ条件があり、それに応じて膜厚もコントロールします。

例えば、電解メッキは通電を行いながらメッキ皮膜を生成させる方法です。

メッキを行う際の電流密度やメッキ時間を管理し、適切なメッキ厚へと仕上げてゆきます。

また、メッキは蛍光X線膜厚計など非破壊試験や断面顕微鏡観察などの破壊試験で計測する他、メッキ前後の厚みをマイクロメータで計測して割り出すこともできます。

依頼者は、品物に対して適切な膜厚をメッキ業者に依頼したり相談したりすることができます。


3. 膜厚による機能の違い

3.1. 耐食目的

メッキの膜厚は必要な機能によっても異なり、適切な量があります。

例えば、耐食性は比較的厚めのメッキを行います。

耐食性を付与できるメッキの代表格である亜鉛メッキの場合、電気亜鉛メッキで5〜25μm、溶融亜鉛メッキで50μm以上の皮膜となります。

耐食性のメッキにもさまざまな種類があるものの、基本的に皮膜が厚いほどより高い耐食性を発揮し、品物を腐食から守ってくれます。

逆に、耐食性がほしいのに薄いメッキにしてしまうと、その品物の耐用年数などを保証できない場合も出てくるので、注意が必要です。

使用環境に応じて推奨されるメッキの厚みも規定されていることが多いです。


3.2. 硬度目的

硬度目的の場合も厚めの皮膜が必要です。

例えば、硬度目的の代表的なメッキとして挙げられる硬質クロムメッキであれば、膜厚は5〜100μmになります。

硬度に対しても膜厚は厚いほど良く、場合によっては数百μmに上ることもあります。


3.3. 電子部品へのメッキ

電子部品に対して、導電性などを付与する意味でメッキをする機会も少なくありません。

電子部品は精密な寸法管理が必要な場合もあり、一方で導電性は表面に皮膜さえあれば付与することができます。

したがって、電子部品へのメッキはそれほど厚いものにはなりません。

例えば、代表的な金メッキであれば、0.01μm〜数μm程度です。


3.4. 意匠目的

意匠性重視のメッキにおいても、それほど厚い皮膜は必要ありません。

メッキは皮膜が存在する時点で表面の見た目は変わるわけですから、それを厚くしたからといって見た目が良くなってゆくわけでもありません。

意匠メッキといえば電子部品同様やはり金メッキが代表的なものですが、0.01〜1.0μm程度の膜厚です。


3.5. コスト

このようなさまざまな膜厚に対して、それぞれに当然コストがかかります。

コストはメッキの種類によっても違い、例えば金メッキなどは高額です。

また、膜厚が厚いほどコストは掛かるため、やみくもに厚いメッキを指定してしまうと、メッキ代だけでも高額になってしまいます。


4. 膜厚は大きいほど良いのか?

では、コストを度外視した場合、メッキの膜厚は厚ければ厚いほど有利なのでしょうか?

例えば耐食性目的の場合、膜厚が厚いと確かに耐食性は向上します。

一方で、コストが増加する他にも膜厚が大きすぎるとひび割れなどのリスクも増大します。

せっかくメッキしたものがひび割れてしまうと、そこから腐食が進行してしまう場合もあり、耐食性は保たれなくなってしまいます。

硬度目的の場合も、厚い膜厚は確かに硬度を増加させてくれますが、一方であまり厚いと密着性が損なわれ、剥がれてしまう可能性もあります。

十分な密着性の確保を行うためには、前処理などに手間を掛けなければならず、膜厚以上のコストが掛かってしまう可能性もあります。

また、寸法精度の面でも、例えば100μmというと0.1mmです。

品物によっては寸法精度に関わる話になる場合もあります。

コストをかけてまで厚いメッキにしても、メリットよりデメリットのほうが多く、用途とコストを見比べ、適切なメッキ種類を適切な厚み分だけ行うことが重要です。


5. 電解メッキと無電解メッキ

メッキ膜厚についてはもう一点、均一性という問題もあります。

電解メッキは、電流密度が膜厚に影響を与えます。

つまり、同じ素材であっても、電流密度が密なところにはより皮膜が生成され、疎なところでは薄い膜厚となる場合が出てくるのです。

シンプルな形状でもさることながら、その度合いは複雑な形状になるとより顕著になり、メッキ厚のばらつきが大きくなるのです。

このようなばらつきの問題は、無電解メッキによって解消されます。

無電解メッキは、メッキを行う際に電流を用いないため、電流密度は膜厚と関係ありません。

メッキ液内の電解液の作用で化学還元によって皮膜が生成されるため、メッキ液が浸っている箇所であれば同等に皮膜が成長してゆきます。

したがって、どんなに複雑な形状であっても、皮膜は均一に生成され、ばらつきはありません。

なお、膜厚はメッキを行う時間に応じて大きくなります。


6. 適切な種類や膜厚を決めるに当たって

一部耐食性などで厚みが規定されているもの以外は、さまざまな条件が重なるメッキの種類や膜厚はなかなか自分で決めることも困難です。

どのようなメッキをどのぐらいすればよいのか?それはコストがどのぐらいかかるのか?

メッキは必要な知識や経験も多いため、迷ったときはメッキ業者に相談してみることが一番です。

また、メッキには必要な前処理や条件設定もあり、それらを怠ると膜厚のムラや剥がれ、ひび割れなどのメッキ不良を起こしてしまう可能性もあります。

経験豊富なメッキ業者を頼り、十分に相談して方針を定めましょう。

弊社 株式会社コネクションも、過去にさまざまなメッキを行った実績が豊富にあります。

あなたが求める最適なメッキをご提案しますので、遠慮なくご相談ください。


7. まとめ

メッキの膜厚についてさまざまな観点から説明してきました。

以下はそのまとめです。

・メッキの皮膜の厚さはnm〜μmの単位の大きさである。

・メッキにはさまざまな目的があり、それぞれによって推奨される膜厚も異なる。

・メッキの膜厚は厚くなるほどコストも高い。

・膜厚は厚いほど良いというわけではなく、必要に応じて適切な膜厚を決定することが重要である。

・均一な皮膜を生成させたい場合は、電解メッキより無電解メッキを選択したほうが良い。

・メッキの種類や膜厚は専門的な知識を要す場合も少なくないので、迷ったときはメッキ業者に相談することも必要である。




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【著者のプロフィール】

1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。

30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。




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