フッ素樹脂は電気的にも優れており、特にその誘電特性から高周波回路基板としての需要が高い材料です。
さらに、撥油・撥水性を示すことからも、化学・医療分野などの広範囲にわたって使用されています。しかしながら、表面が不活性であることから、接着性に乏しく、金属薄膜の堆積が困難なことなど、他の物質と複合し難いといった欠点があります。
■INDEX■
フッ素樹脂とは 1.2 フッ素樹脂の種類
フッ素樹脂の特性 2.1 耐熱性 2.2 耐寒性 2.3 非粘着性 2.4 滑り性 2.5 耐薬品性 2.6 絶縁性
くっつかないフッ素樹脂を接合できるように 4.1 フッ素樹脂接合はなぜ必要?
1.フッ素樹脂とは
フッ素樹脂とは、フッ素原子を含む樹脂原料(プラスチック原料)の総称です。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、 PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などを含む9品種あり、耐熱性・滑り性・非粘着性・耐薬品性・低摩擦性・絶縁性に優た性質を同時に兼ね備えた樹脂材料(プラスチック材料)です。
これらの特性を活かし、食品、化学、半導体、液晶、理化学機器、など幅広く利用されている材料です。
1.2 フッ素樹脂の種類
フッ素樹脂にはPTFEやPFAをはじめとする9つの品種があります。
略称 | 名称 |
PTFE | ポリテトラフルオロエチレン |
PFA | パーフルオロアルコキシアルカン |
FEP | パーフルオロエチレンプロペンコポリマー |
ETFE | エチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー |
PVDF | ポリビニリデンフルオライド |
PCTFE | ポリクロロトリフルオロエチレン |
ECTFE | エチレンークロロトリフルオロエチレンコポリマー |
TFE/PDD | テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー |
PVF | ポリビニルフルオライド |
なかでも最も多く使用されている樹脂がPTFEです。世間一般的に“テフロン™”と呼ばれているフッ素樹脂の多くは、このPTFEをさします。
2. フッ素樹脂の特性
フッ素樹脂には主に6つの特性があります。
耐熱性、耐寒性、非粘着性、滑り性、耐薬品性、絶縁性、耐候性です。
2.1 耐熱性
PTFEの融点は327℃で、他のプラスチックに比べ優れた耐熱性があり、連続使用温度は260℃になります。高温環境下でも劣化しないため自動車の内部に使われる部品や食品製造工程で必要とされています。
2.2 耐寒性
PTFEは-253℃という優れた耐寒性があり、フッ素樹脂製品に加工されても-100℃でも使用できる高い耐寒性を保ちます。
2.3 非粘着性
フッ素樹脂はほとんどの物質を固着させない特性があります。
離型性ともいわれ、仮にくっついたとしてもすぐに剥がせる性質があります。粘性の物質も滞留させないことから、食品製造工程や印刷機などの機械部品に採用されています。また非粘着性を生かして洗浄工程を軽減させるメリットもあります。
2.4 滑り性
フッ素樹脂はあらゆる個体の中で最小の摩擦係数をもっています。摩擦係数が低いため摩擦抵抗がほとんどかかりません。滑ることで製品搬送の傷防止やスムーズに製造工程を進めたい場面で必要とされています。
2.5 耐薬品性
フッ素樹脂はほとんどの薬液や溶剤におかされることはありません。強酸や強アルカリに触れても不純物を起こしにくい性質があるため、特に半導体製造装置に多く採用されています。薬液容器、配管、チューブ、ウエハーキャリアなど半導体製造装置にはフッ素樹脂製品が欠かせません。
2.6 絶縁性
フッ素樹脂はプラスチックの中で最高レベルの電気絶縁性を持っています。プラスチックの中でも誘電率、誘電正接が最も小さく周波数や温度にも影響されにくいため、高周波数の用途で多く採用され大容量の高速通信社会に大きく貢献しています。
また、フッ素樹脂製の基板材や電線はフッ素樹脂がもつ耐熱・耐寒性の特性も相まってメンテナンスフリーの製品として重宝されています。
2.6 耐候性
フッ素樹脂は紫外線や可視光線、湿気などの影響をほとんど受けません。
多くのプラスチックは長年月、野外に置かれると劣化しますが、フッ素樹脂は大気中の酸素や化学物質による酸化による影響をほどんど受けないため、30年以上も劣化せずに強度を保ち続けることができます。フッ素樹脂は撥水性も兼ね備えているため主に建築分野において屋根材や壁材、シール材として採用されています。
3. フッ素樹脂の用途
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はテフロンとも呼ばれ広く知られていると思いますが、非粘着性が非常に高く、調理用具のコーティング、シーリング材、軸受などの用途で広く使用されています。
ポリフルオロエチレン(PFA)はFEPと似た性質を持ちますが、さらに耐化学薬品性に優れています。化学プラント、半導体製造、医療機器などで使用されています。
エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は高い耐久性と透明性を持ち、屋根やバイオ構造物、緩衝材などの建築用途に利用されています。
これらのフッ素樹脂は、その特殊な特性により、食品業界、医療、航空宇宙、化学工業、電子産業、建設業など、幅広い分野で幅広い用途に応用されています。
4.くっつかないフッ素樹脂を接合できるように
フッ素樹脂はほとんどの物質を固着させない非粘着性と呼ばれる特性を持っています。
離型性ともいわれ、仮にくっついたとしてもすぐに剥がせる性質があります。粘性の物質も滞留させないことから、食品製造工程や印刷機などの機械部品に採用されています。また非粘着性を生かして洗浄工程を軽減させるメリットもあります。
ほとんどの物質を固着させないフッ素樹脂ですが、当社にはフッ素樹脂同士を接合させる事のできる表面処理があります。
4.1 フッ素樹脂接合はなぜ必要?
フッ素樹脂はプラスチックの中で最高レベルの電気絶縁性を持っています。プラスチックの中でも誘電率、誘電正接が最も小さく周波数や温度にも影響されにくいため、高周波数の用途で多く採用され大容量の次世代通信回路基板としての利用が期待されています。
次世代通信(ポスト5G・6G)回路基板では伝送損失を低く抑えるため、誘電損失の小さい基板と電気抵抗の小さい回路を平滑な界面で接着する必要がありますが、フッ素樹脂は物質を固着させない非粘着性に優れているため異なる材料との接着が困難です
フッ素樹脂は分子の間に働く力が小さくなる(小さな分子間力)ため、表面の自由エネルギー(表面張力)がはたらき、物質がくっつきにくくなります。このような分子構造のため、PTFEは非粘着性、撥水・撥油性の特性を有しています。
フッ素樹脂は非粘着性、撥水・撥油性に優れる事から接着剤が容易に剥離してしまいます。一般的にフッ素樹脂の接着には、金属Naを溶媒に分散させた液に浸漬して表面を改質する方法が広く用いられていましたが、表面を過剰に粗化してしまう、工程の安全性の向上や廃液の環境負荷の低減の観点から、代替方法が強く求められています。
従来の金属Naを溶媒に分散させた液を利用した処理方法では、特殊な作業環境や高価な装置が必要とされるだけではなく、その効果も十分なものとは言えません。
当社のナトリウム処理は、このような問題を解決した「安全・処理効果が高い」表面処理です。しかも、ふっ素樹脂本来のその他の特性には、ほとんど影響がありません。
5.ナトリウム処理の用途
ナトリウム処理はフッ素樹脂の接着、着色、印字、メッキ等のために表面を改質させる処理で、主な使用例は次の通りです。
業界 | 使用用途 |
自動車 | オイルシール、ガスケット、燃料チューブ、ハーネス、その他自動車部品 |
電線 | フッ素樹脂電線、ケーブル |
医療 | カテーテル、チューブ |
電気・電子 | 熱転写ロール、フッ素樹脂プリント基板、感熱センサ、半導体の製造装置 |
電池 | 燃料電池セパレーター |
広告 | フッ素樹脂シート、看板 |
食品 | フッ素樹脂製チューブ、容器、ケース、コンベア |
その他 | フッ素樹脂シート、チューブ、テープ、その他成形品 |
6.まとめ
フッ素樹脂にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、 PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などを含む9品種あり、耐熱性・滑り性・非粘着性・耐薬品性・低摩擦性・絶縁性に優た性質を同時に兼ね備えた樹脂材料(プラスチック材料)です。
フッ素樹脂はほとんどの物質を固着させない非粘着性(離型性)と呼ばれる特性を持っており、仮にくっついたとしてもすぐに剥がれてしまう性質があります。
非粘着性は食品製造工程や印刷機などの機械部品などで需要があり広く利用されていますが、非粘着性であることから他の部品と接着し機能性を持たせたい場合、この非粘着性が仇になってしまいます。
フッ素樹脂を接着できる状態にするために金属Naを溶媒に分散させた液に浸漬して表面を改質する方法が広く用いられていましたが、工程の安全性や廃液の環境負荷の低減の観点から、代替方法が強く求められています。 当社のナトリウム処理は、このような問題を解決した「安全・処理効果が高い」表面処理です。しかも、ふっ素樹脂本来のその他の特性には、ほとんど影響がありません。 PTFE、PFAへのナトリウム処理の実績がございます。 ナトリウム処理をご検討されておられましたらお気軽にご相談ください。
お急ぎの方はこちら 直通電話 090−6819−5609
【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、 製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。 メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
Comments