黒色のメッキ処理には複数の種類があります。
それぞれのメッキ処理には様々な特性があり、それぞれに用途が異なります。
黒色メッキの目的は外観以外にも反射防止や耐食性などにも使われます。
黒色メッキの処理方法も電気メッキ・無電解メッキ・化成処理などございますので、特徴含めご案内させて頂きます。
■INDEX■
1.マットブラック
マットブラックメッキは、光沢を抑えた落ち着いた黒色の仕上がりを特徴とするメッキ技術です。主にデザイン性が重視される分野や、光の反射を避けたい用途で使用され、他のメッキ処理にはない独特の質感と外観を提供します。
外観の仕上がりは、光沢を抑えた均一な黒色の仕上がりで、シックで高級感のある外観を演出します。そのため、アクセサリー、時計、家電製品、自動車の内外装部品など、外観を重視する製品に多く使用されます。
皮膜自体が、光の反射を防ぐ効果があり、視認性を高める必要がある部品や、グレア(眩しさ)を抑えたい製品に適しています。例えば、カメラ部品や光学機器、航空機のコックピット部品などで使用されることがあります。
耐食性にも優れており、厳しい環境下でも表面の腐食を防ぎます。これにより、錆びや腐食に対する耐久性が向上し、長期間にわたって美しい外観を維持します。屋外で使用される製品や腐食しやすい環境に適した仕上げとなります。
さらに、膜厚にバラつきが少ないこともマットブラックメッキの大きな特徴の一つです。この特性から、精度が求められる半導体関係の部品にも多く利用されています。さまざまな材料への処理が可能な点も、マットブラックメッキの大きな利点です。
2.黒色無電解ニッケルメッキ
黒色無電解ニッケルメッキは、デザイン性が求められる製品から、耐食性や耐摩耗性が重要視される工業製品まで、幅広い用途で優れた効果を発揮するメッキ技術です。その特徴的な黒い外観は、装飾性を高めると同時に、機能性を備えた仕上がりを提供します。
このメッキ技術は、化学反応を利用して金属表面に均一な被膜を形成するため、複雑な形状や内部の細部に至るまで一貫したメッキ厚を実現します。従来の電気メッキと異なり、電流の影響を受けないため、ムラのない仕上がりが得られます。さらに、黒色無電解ニッケルメッキは光沢のある美しい外観が特徴で、デザイン重視の製品にも広く利用されています。
無電解ニッケルメッキの特性として、非常に高い耐食性が挙げられます。緻密で均質な被膜が、外部からの腐食因子の侵入を効果的に防ぐため、黒色無電解ニッケルメッキも優れた防錆効果を発揮し、製品を長期間にわたり保護します。このため、腐食環境下で使用される部品や装置、機器にも適しています。
さらに、黒色無電解ニッケルメッキは硬度が高く、耐摩耗性にも優れています。そのため、摩耗が発生しやすい機械部品や工具にも使用され、製品の長寿命化に貢献します。また、耐摩耗性と装飾性を兼ね備えた表面処理として、時計やアクセサリーなどの高級感を求める製品にも使用されています。
適用可能な素材も多岐にわたり、アルミ、銅、ステンレス、鉄など多様な金属に対応できるため、設計や材料選定の幅が広がります。
このように、黒色無電解ニッケルメッキは、装飾的価値と実用的な機能性を併せ持つ優れた表面処理技術として、さまざまな産業分野で高い評価を得ています。特に、外観の美しさを求めつつ、耐食性や耐摩耗性も重要視される場面で、他のメッキ技術にはない独自の価値を提供しています。
3.黒色アルマイト
アルミニウムに酸化被膜を形成し、染色することで得られる黒色の表面処理技術です。特にアルミニウム製品の装飾性、耐食性、耐摩耗性を向上させるために広く利用されています。
アルマイト処理によって生成される酸化被膜は、非常に高い耐食性を持っています。これにより、酸やアルカリ、塩分などの腐食性の環境下でもアルミニウムの表面を保護します。黒色アルマイトも同様に高い防錆効果を提供し、製品の耐久性を向上させます。
黒色アルマイトは耐摩耗性が高いため、日常的な使用による擦り傷や摩耗を軽減することができます。このため、摩擦が多い部品や頻繁に触れる部分にも適しており、例えば工具、機械部品、スポーツ用品などに多く使用されています。
4.黒色クロメート
亜鉛メッキされた部品に施される仕上げ処理で、表面に黒いクロメート皮膜を形成することにより、外観を引き締めつつ、優れた防錆効果を発揮する技術です。
黒色クロメートは、亜鉛メッキの防錆性能をさらに向上させる効果があり、クロメート皮膜が外部からの腐食因子(酸素や湿気)を遮断し、基材を効果的に保護します。このため、厳しい環境下や屋外での使用においても、長期間にわたり防錆効果を発揮します。
また、黒色クロメートは比較的低コストでありながら、高い防錆性と美しい外観を提供できるため、多くの業界で採用されています。コストと性能のバランスに優れており、量産品への適用にも適しています。
さらに、環境面に配慮し、6価クロメートと3価クロメートのどちらかを選択することが可能です。3価クロメートは、環境への負荷を軽減しつつ、同様の防錆効果を提供するため、環境規制が厳しい地域や業界でも利用されています。
5.黒染め
主に鉄やステンレスなどの金属表面に化学的に酸化皮膜を形成して、黒色に仕上げる処理方法です。
黒染めは、金属表面に酸化被膜を形成することで、防錆効果を持ちます。黒染め自体の防錆性はそこまで高くないものの、油やワックスと組み合わせることで錆を防ぐ効果が向上します。そのため、軽防錆用途としても利用されます。
黒染めは、金属の表面にごく薄い酸化皮膜を形成するだけなので、他の表面処理方法と比べて寸法変化がほとんどありません。この特性により、精密部品など寸法精度が重要な製品にも適しています。
黒染めは比較的低コストで処理できるため、大量生産品にも適用しやすい処理方法です。また、設備や工程がシンプルであり、短時間で処理が完了するため、コストパフォーマンスに優れています。
6.リューブライト(リン酸マンガン、リン酸亜鉛)
リン酸マンガンやリン酸亜鉛を利用した表面処理技術で、主に金属部品に防錆性や耐摩耗性、潤滑性を付与するために使用されます。
6.1リン酸マンガン
リン酸マンガンは、鉄系材料の表面にマンガン系リン酸塩被膜を形成する表面処理です。主に摩擦や摩耗を軽減するために使用され、機械部品や武器の内部部品などに適用されます。
リン酸マンガン処理は、表面に微細な多孔質の被膜を形成するため、潤滑油やグリースが浸透しやすく、潤滑性を大幅に向上させます。このため、摩耗を防止し、可動部品の寿命を延ばす効果があります。
被膜自体には防錆効果があり、特に潤滑油と組み合わせて使用することで高い防錆性を発揮します。過酷な環境下や長期間の使用にも耐えられるため、自動車部品や工業機械などに広く用いられています。
6.2リン酸亜鉛
リン酸亜鉛は、鉄や鋼材に適用される処理で、亜鉛系リン酸塩皮膜を形成します。主に下地処理として、防錆性を高めるために使用されます。
リン酸亜鉛被膜は、塗装の密着性を向上させるための下地処理として広く使用されています。塗装が剥がれにくくなることで、長期的な防錆効果を実現します。
リューブライト処理は、防錆性、潤滑性、耐摩耗性を求められる部品にとって最適な処理技術として、多くの産業分野で重宝されています。
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【著者のプロフィール】
1996年、福井工業大学附属福井高等学校を卒業後、地元のメッキ専門業者に入社、製造部門を4年経験後に技術部門へ異動になり、携帯電話の部品へのメッキ処理の試作から量産立ち上げに携わる。
30歳を目前に転職し別のメッキ専門業者に首席研究員して入社。メッキ処理の新規開発や量産化、生産ラインの管理、ISO9001管理責任者などを担当。
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