カニゼンメッキの歴史、
塗装との違い
カニゼンメッキと無電解ニッケルメッキは、違う処理だと思われていた方も多いと思います。
カニゼンメッキは無電解ニッケルメッキの俗称です。
カニゼンメッキ処理を業者に依頼する際には、カニゼンメッキの特徴を押さえておきましょう。
カニゼンメッキの特徴を解説したうえで名前の由来や歴史、同じような工程・処理として混同されやすい塗装との違いについてもご紹介します。
1. カニゼンメッキの呼び方について
メッキ処理の種類や手法には様々なものがあり、そのうちの一つに「カニゼンメッキ」があります。別名「無電解ニッケルメッキ」とも呼ばれるカニゼンメッキは、具体的にどのようなもので、なぜカニゼンメッキという呼び方で知られているのでしょうか。まずは、カニゼンメッキとは何かという概要部分を解説します。
1.1 カニゼンメッキとは?
カニゼンメッキとは、日本カニゼン株式会社が登録商標している無電解ニッケルのメッキ手法です。無電解ニッケルメッキといわれるか、カニゼンメッキといわれるかは、単純に総称を使うか、日本カニゼン株式会社の商標(固有名詞)を使うかの違いです。無電解ニッケルメッキについて理解を深めるには、この呼び方の違いを基礎知識としてぜひチェックしておきましょう。
◉カニゼンメッキの特徴
カニゼンメッキは無電解ニッケルメッキなので、電気を使うことなくニッケルのメッキ処理を行えるのが特徴です。化学反応を利用するため、膜厚が均一になることが特徴の一つです。膜厚のばらつきは非常に少なく、寸法に対して高精度な仕上がりを実現できるのが強みとなっています。
均一性の高い膜厚を重視したいときは、ほかのメッキと比較してカニゼンメッキは非常に適していると考えられます。複雑な形状の製品にも対応可能です。また、ほかにもカニゼンメッキには優れた性質がたくさんあります。例えば密着性、硬度、耐熱性、耐食性、耐摩耗性といった点で優れています。
カニゼンメッキは密着しやすく仕上がりがきれいなので、すぐに剥がれてしまうといったトラブルにもつながりにくいです。二次加工として曲げ加工を加えた場合でもその部分からすぐに剥がれてしまうことは少ないメッキです。硬度の高さも強みの一つです。耐熱性も高いため、熱を加えればさらにカニゼンメッキの硬度は上昇していきます。また、変色もしづらく、そのままの色が長い間維持されやすいことでも知られています。
◉カニゼンメッキの由来
カニゼンメッキの名前の由来を見ていきましょう。日本カニゼン株式会社によれば、以下の3つの頭文字をとって「Kanigen(カニゼン)」と名付けたとされています。
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触媒:C(K)atalytic
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ニッケル:Nickel
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生成:Generation
無電解ニッケルメッキは還元反応を利用したメッキ処理の手法にあたるため、触媒という言葉を用いるのが特徴となっています。カニゼンメッキとは何だろうと思ったら、名前の由来についても注目するとよいでしょう。
1.2 カニゼンメッキ以外の呼び方もある?
カニゼンメッキには、実際の呼び名のほかにもたくさんの呼び方があります。無電解ニッケルメッキという名前を除けば、主に以下のような名前や呼び方が挙げられるでしょう。
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無電解Ni
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化学Ni
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化学ニッケル
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Elp
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Kni
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Ni-P
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ニッケル-リン
無電解ニッケルメッキは化学反応を利用することから化学ニッケルとも呼ばれます。そのため、この法則にのっとれば、カニゼンメッキ・無電解ニッケルメッキも化学ニッケル・化学Niと呼ぶことができるわけです。
また、無電解ニッケルメッキは英語表記すると「Electroless nickel plating(無電解ニッケルメッキ)」、もしくは「Chemical nickel plating(化学ニッケルメッキ)」となります。Elpという名前はここからきていることがわかるでしょう。
ニッケル-リンという呼び方は、還元作用を利用することで作られる皮膜がニッケルリンの皮膜になることからきています。カニゼンメッキとは何かを理解する際には、このように様々な呼び方があることもぜひ覚えておきましょう。
2. 無電解ニッケルメッキの歴史と塗装との違い
カニゼンメッキについて整理していく際には、無電解ニッケルメッキの歴史についても目を向けておきたいところです。現在では多くの製品の加工に採用されるようになった無電解ニッケルメッキは、膜厚に均一性があること、耐熱性が高く変色に強いことなど様々な特性を持つことが知られています。メッキ処理の長い歴史の中では、どのように発見されて広まっていったのでしょうか。ここでは、カニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)の歴史を見たうえで、混同されやすい塗装との違い、それぞれの工程の特徴についても解説します。
2.1 無電解ニッケルメッキの歴史
無電解ニッケルメッキは均一性に優れた膜厚や変色のしづらさ、耐食性や硬度の高さなどが大きな特徴として挙げられます。無電解ニッケルメッキという手法は、歴史の中のどのようなタイミングで登場したのでしょうか。
電気エネルギーを使用しない手法である無電解ニッケルメッキは、おおよそ1930年頃の時期に発見されたといわれています。ガラスの表面に銅の皮膜が形成される(=鏡面反応)から着想を得て、電解を施さずにメッキするという手法がとられました。
時代は進み、1944年のアメリカで、軍隊に使う大砲のメッキ研究を進めていた際に、たまたま化学反応から無電解ニッケルメッキ処理が発見されることとなります。この偶然の出来事がきっかけとなり、無電解ニッケルメッキは1946年に正式に発表される結果となりました。
正式な無電解ニッケルメッキ発表後、1952年に現在のカニゼンメッキにあたる無電解ニッケルメッキが実用化されました。これを行ったのはアメリカのGATC社です。その後GATC社はアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本においてカニゼンメッキのライセンスを販売し、1955年12月に日本カニゼン株式会社が設立される運びとなりました。そしてその約2年後である1958年1月には、国内初の無電解ニッケルメッキの操業がスタートしたのが日本でカニゼンメッキの始まりです。
2.2 「メッキ」と「塗装」の違い
メッキというと、“製品に表面処理を施す”という意味では、「塗装」と混同されやすいという側面を持ちます。実際に、製品に様々な加工を施す段階で、メッキにすべきなのか塗装にすべきなのか、適した選択肢がわからず困っている方も多いかもしれません。ここでは、メッキとは何か、塗装とは何かという点を改めて整理したうえで、特徴や工程などの違いを見ていきましょう。
◉メッキとは
広辞苑で調べますとめっきとは「装飾・防食・表面硬化のために、金属または非金属の表面に他の金属の薄膜を密着させること。また、それを施したもの。ときん。」とされています。
電解や化学反応などの手法によって金属の皮膜を析出させる処理のことを、一般的にメッキと呼びます。加工する際には、メッキ液に製品を浸漬し、電解処理をしたり、還元作用によって表面処理を行います。
◉塗装とは
広辞苑で調べますと塗装とは「装飾や保護のために、物の表面に塗料を塗ること。また、塗料を吹きつけること。」とされています。
塗装とは何らかの塗料を塗ったり吹き付けしたりすることで、塗膜のコーティングを行う処理のことを指します。ちなみにメッキの場合は皮膜といいますが、塗装の場合は塗料に樹脂を含むため塗膜といういい方をするのが一般的です。
◉両者の違いとは
両者の違いについて見ておきましょう。製品の表面になんらかの膜を施工するという意味ではどちらも同じですが、メッキと塗装では材料に大きな違いがあります。メッキの場合は金属を材料としていますが、塗装の場合に使われる塗料は主に樹脂を材料としています。また、施工の方法・工程にも大きな違いがあります。
どのような性質を持つ皮膜(塗膜)なのかという点も、メッキと塗装では大きな違いが出てきます。例えば、無電解ニッケルメッキなら膜厚に均一性が生まれますが、塗装の場合は均一性が低くムラが生じやすい特徴があります。密着性や耐久性、硬度の高さといった面でも、塗装に比べメッキの優位性が高いという特性があります。ただし、メッキはその分コストがかかるだけでなく、劣化に伴うメッキの再処理も難しいことがメッキのデメリットです。
このように、メッキと塗装は似ているようで異なるポイントが多々あります。それぞれのよい点と気になる点を比較したうえで、よりよい選択肢を検討していきましょう。
3. カニゼンメッキ処理の依頼は株式会社コネクションへ
メッキ処理を業者に依頼する際には、硬度や耐熱性、耐食性の高さといった特徴に目を向けておきましょう。カニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)はサビや変色などに強く、長持ちしやすいのがポイントです。
株式会社コネクションでは、無電解ニッケルメッキ処理のご相談・ご依頼を随時承っております。お客様の製品に合わせ、製品に付着した汚れを除去して密着性を高める工程を行うことが可能です。メッキ処理について相談できる業者をお探しの際には、株式会社コネクションへぜひお気軽にお問い合わせください。